ことしも残すところわずか。お正月の風物詩として長く親しまれている年賀状ですが、新年のあいさつの多様化や、郵便料金の値上げなどを背景にやめる人も。加速する「年賀状じまい」の背景を取材しました。

日本のお正月の風物詩、年賀状。

時代とともに、取り巻く環境は変わりつつあるようです。

加賀谷悠羽記者
「ことし年賀状を送りますか?街の人に聞いてみます」

60代女性
「さっき買ってきたばかりです。150枚」

60代女性
「出します。来た人は出そうかなという感じで」

一方で。

10代女性「出さないです」

記者「理由ありますか?」

10代女性「なんだろう、時代?」

20代男性「みんなにメッセージは送りますけど、紙は使わない」

80代男性「今じゃみんな携帯でしょ?簡単にね。だんだんと物臭になってくるんですよ」

30代女性「正直送ってこないでって思っちゃう」

街の人からは、年賀状のやり取りを「すでにやめた」「本当はやめたい」といった声も聞かれました。

加速する「年賀状じまい」背景は…

フォトブックサービスを展開するアスカネットの調査では、およそ6割の人が2024年の年賀状を「出さなかった」と回答。

日本郵便によりますと、年賀はがきの発行枚数は14年連続で減少し、年賀状のやり取りを辞退することを知らせるはがきや、シールなどの関連商品も続々と登場。

加速する「年賀状じまい」の背景について、人とのつながりやコミュニケーションについて研究する、東海大学・澤岡詩野准教授に聞きました。

東海大学健康学部 澤岡詩野准教授
「昭和でずっと永遠と、年賀状を書くのが当たり前という中で育ってきた方々が、体力気力が続かなくて、ちょっと年賀状はやめようかなとか、限られた人に出していこうかなという流れ」

専門家は、要因の1つとして高齢化を指摘。ほかにもSNSやメールで新年のあいさつを済ます人が増えたことや、郵便料金の改定にともない、ことし10月から、年賀はがきが63円から85円に値上がりしたことも影響しているとみられています。

年賀状に関する意識調査では「面倒だけど仕方なく送るもの」と回答した人が最も多く、次いで「形式的な習慣」と、義務感や伝統に基づいたものと捉えている人が多いのも現実です。

角が立たない「年賀状じまい」とは

では、実際「年賀状じまい」を思い立ったら何から始めればよいのか?教えてもらいました。

東海大学健康学部 澤岡詩野准教授
「ご自身の去年もらった年賀状をまずは広げてみて、誰だか思い出せないとか、そういう人を外堀に、そうやってちょっと濃淡をつけて3つくらいの円に分けていきながら、最後、年賀状はがきで出す相手ってどんな相手だろう、というところを絞り込んでいく」

まずは、送る人の「絞り込み」。住所録や去年もらった年賀状を参考に、1人1人を思い浮かべ、これから先もつながっていたいと思う人を優先的に残していきます。澤岡准教授によると、この作業で平均して13人ほどに絞り込まれるといいます。

”感謝の気持ち”伝える手段が多様化

古くから新年の慣習として受け継がれてきた年賀状ですが、いつかはなくなってしまうのでしょうか。

澤岡准教授は「年賀状じまい」を
・はがきで送ることをやめるのか
・“新年のあいさつ”の儀礼自体をやめるのか

2つの見方からこのように分析します。

東海大学健康学部 澤岡詩野准教授
「はがきで出すということ自体は、量より質みたいなところで、間違いなく枚数は減っていくように思うんですけれど。これだけ『人との繋がりって』みたいなことがある意味問い直される時代なので、そういう中で、誰かにありがとうを伝えたりとかおめでとうって言い合えるっていう機会は無くす必要はない。その必然性は誰も感じてはいないと思うので。『あけましておめでとうございます』がなくなるかっていうと、いろいろと伝える手段が多様化して残っていくのかなというふうには思っています」

また、このような時代だからこそ、年賀状の価値は高まっているといいます。

東海大学健康学部 澤岡詩野准教授
「今までは何か百把一絡に年賀状を出していた時代ですけど、こういう時代になってくると、逆に年賀状を出すっていうことが、何か相手に特別な気持ちを伝えるということに、だんだん時代としては、もしかしたら年賀状のが位置づけが変化していくのかな。戦略的に『この人は絶対自分にとって大事だから伝えなきゃ』という相手に、年賀状をはがきで出すみたいなところを、うまく使っていくといいのかななんていうふうに思ったりします」

年賀状はあくまでもコミュニケーションの手段…

「出す」ことにとらわれずに、ゆったりと楽しめる人数まで送る人を絞り込んだりすることで、人間関係を見つめ直すきっかけにもなりそうです。

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