かつて『越後の虎』と呼ばれた空手の元世界王者が53歳で現役復帰し、再び世界に挑戦することを決めました。“最後の挑戦”と位置付けた国際大会に臨む思いを取材しました。

新潟市東区の空手道場「夢源会(むげんかい)」で代表師範を務める岩木秀之さん(53)は、2005年の世界大会・中量級で優勝した元世界王者。

現役時代には『越後の虎』とも呼ばれ、その実力は53歳になった今も衰えていません。

岩木さんは2005年の大会を最後に現役を退き、道場や家庭教師という形で空手を指導するなど、将来を担う子どもたちの育成をしてきました。

そんな岩木さんが現役引退から19年たった今年ある挑戦を決意しました。来月1日東京で開催される国際大会に、選手として出場することを決めたのです。

「世の50代を元気づけるような、そんな活動にしたいし、自分の力を図ってみたいという競技者のそんな欲もあったり…」

岩木さんは空手に他の格闘技を組み合わせた独自のスタイルで大会に挑みます。

その一つがブラジル発祥の武道「カポエイラ」。フィジカルの強い外国人選手に勝つために、2005年の世界大会のときからカポエイラを取り入れて戦っています。独特のステップや距離で相手を翻弄するのです。

カポエイラを組み合わせた空手に『ジークンドー』をプラスし、唯一無二のスタイルを作り上げようとしています。

岩木さんが今回出場するのは、『RF武道空手道』の大会。『RF』とはリアル・ファイトのこと。ロシアやヨーロッパなどで開催されている総合系空手で、打撃や投げ技に加え、締め技や関節への蹴りも認められています。

「この関節ってこっちに曲がる関節ですよね。これをここにぐーっと押し込んで、逆に折ってしまうという恐ろしい技なんですけど。これが空手界では禁止技なんですね。選手生命に関わる。でも、今回出る大会がこれがありなんですよ」

「一生練習することないと思っていたんですけど、今回やらなければいけないので…」

危険をともなう、人生をかけた大一番に向け日々練習に取り組む岩木さん。
練習後に一息つくのが、ジークンドーの指導者・宇佐美信広さん(56)が営むバーです。お酒が飲めない岩木さん、のどを潤すのはビタミンなどが含まれるノンアルコールカクテルだそうで…

岩木烈生さん(18)
「この年になって、ちゃんとしっかり自分の父親の勇姿を見届けられるのは、なかなか他の同じ子たちが体験できないことなのかなと思うと、すごく嬉しいですね」

烈生さんは世界大会で「セコンド」を務めます。10月に前哨戦として初めて父親のセコンドにつきました。

岩木さんの息子・烈生さん(18)
「セコンドまで不安だったら、選手はもっと不安になるじゃないですか。試合中の時だけは頑張ってこらえていたんですけど、試合終わった瞬間涙が出てきちゃって…」

岩木さんが出場するのは、35歳以上・73キロ以下の部門で、イタリアやスペイン、ウクライナなど世界各国の強者が集まります。

最後は笑顔で終われるように…
集大成の国際大会は12月1日、東京で開催されます。

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