福島県内で長く愛されている、老舗のいまに迫る「老舗物語」。今回は、福島市で100年以上続く和菓子店に注目します。長年の「伝統の味」を守り続けながら新たな挑戦を続ける親子を取材しました。

鮮やかな緑の草餅に、まあるいどら焼き。福島駅から徒歩7分の街なかにある和菓子店『中野屋』

1923年創業、今年で101年を迎える老舗です。これまで歴史を絶やすことなく歩み続けてきました。

いま、店の看板を守っているのは3代目の早坂吉弘さん。

--早坂吉弘さん(3代目)「創業当時から変わらない味をというのが1番ですね。」

店には、代々守られてきた味があります。

それが、この『豆大福』。100年、受け継がれてきました。外側は豆がゴロっと、中にはこし餡がぎっしり。“その日のうちに食べてほしい”消費期限はたった1日です。

--週3日以上通う常連客「(社会人野球の)試合前に豆大福とどら焼きを買って、試合前に食べたらその大会で首位打者とれて。その予約に来ました。」

--20年以上通う常連客「豆がとても歯ごたえが良くて。あと、こしあんなのでその辺がとっても大好きです。」

おいしさの秘密は『豆』。多くの豆大福は赤えんどう豆が使用されますが、中野屋は一味ちがいます。

--吉弘さん(3代目)「創業した時に何か他とは違うものをって考えて。赤があるんだったら青でもいいんじゃないということで青にしたらしい。」

使用しているのは、北海道産の『青えんどう豆』。この豆には、塩が合うということで、塩豆大福に辿り着いたといいます。

吉弘さんと共に、変わらない味を守り続けてきた母・豊子さん。御年90歳の大ベテランです。

--吉弘さん(3代目)「70年だっけ?65年やってる。」

--母・豊子さん「エプロンをかければ豆大福を作っている。」

豊子さんはヘラを使って餡をとり、吉弘さんは餡の玉を作って、餅でくるんでいく。大きさが少し違うところも、手作りならではの良さです。

--母・豊子さん「やっぱりお手伝い出来る限りはやりたいなって。それだけです。孫が洋菓子、福島のフルーツとかね、色々やってくれてありがたいですね。」

豊子さんが目を細めながら話すのは、孫であり、4代目の知弥さんのこと。

--知弥さん(4代目)「常にお客さまの食べた顔を思い浮かべて作っている。」

東京のパティスリーなど3つの店で8年ほど修業した知弥さん。創業100年の節目を盛り上げたいと思い、おととしの夏、福島に戻ってきました。

--知弥さん(4代目)「僕が味を引き継いで、豆大福を引き継いで。もちろん自分の味も出しながらこの店を継続していくということが恩返しであり、やらなきゃいけないことなのかなと思っています。」

知弥さんがお店に吹き込んだ、新しい風。それは、和菓子店のイメージを覆す、まるで芸術のようなスイーツや宝石のようなチョコレート。東京での修行経験を活かし、スイーツ部門を担当しています。

--知弥さん(4代目)「いい意味で福島らしくないケーキだね、おしゃれなケーキだねと言われる。」

知弥さんのこだわり。それは、福島県産のフルーツを使用すること。そして、和菓子屋に置く洋菓子らしく、和洋折衷の一品を必ず並べておくこと、この2つです。この日、ショーケースに並んでいたのは、ピスタチオのクリームと抹茶のコーティングが施されたスイーツ。中には、あんことチーズのムースが2層になっています。まさに和と洋を一度に楽しめる一品。和菓子屋である中野屋だからこそ生まれた商品です。

そして、最大の特徴は営業時間です。和菓子店なのに営業は午後10時まで。3代目の吉弘さんが夜もスイーツを求めている人が意外と多いことに気づき、およそ35年前から始めました。遅い時間帯も客足が途絶えません。名物・塩豆大福も、営業時間が長いことから、朝、昼、夜と時間を分けて作るようにしているといいます。

--お客さん「きょうは家族へのお土産です。めちゃくちゃ助かりますよね、こうやって飲んで帰ったあととか。」

--近くの店の人「お誕生日ケーキとして出すことが多いので、お客さんの方でもすごく喜んでくださって。」

多くの福島県民に愛されてきた「中野屋」。4代目の知弥さんにとって、父・吉弘さんの存在は・・・。

--知弥さん(4代目)「いい意味で職人らしくないのかな。普通の職人ではできないようなコミュニケーションだったりをしてくれたからこそ、今の中野屋が続いてくれてる。そういう意味では本当に尊敬していますね。」

受け継がれた伝統を守りながら新たに挑戦をし続ける。それが中野屋の在り方です。

--吉弘さん(3代目)「古いものは一つぐらい残していただいて、あとはもう好きに自分のやりたいことを挑戦してもらいたいですね。」

--知弥さん(4代目)「ずっとこの地域、福島市、置賜町、福島県の人たちに愛されるようなお菓子屋さんをずっと続けられたら一番いいのかなという風に思っています。」

中野屋は、きょうも夜遅くまで、明かりを灯し続けます。

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2024年7月25日放送回より)

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