内閣府の生命倫理専門調査会は16日、ヒト胚(受精卵)を模して作った「胚モデル」の研究について、指針で一定の規制が必要だとする報告書をまとめた。現時点では胎児にまで育つことは考えにくいとして、培養期間の上限は設けなかったが、ヒトや動物の胎内への移植は禁じる。
今後、所管する文部科学省などが指針を改正し、具体的な規制が始まる見通し。
胚モデルは、さまざまな組織に分化できる人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの塊を培養し、着床前の胚に似せて育てたものだ。
ヒト胚は「生命の萌芽(ほうが)」とされ、日本をはじめ多くの国が、培養期間を14日までに限る「14日ルール」などの厳しい規制を設けている。ただ胚モデルについては、そもそも生命に該当するのか、胎児まで成長させられるかがわかっておらず、倫理的な制約を受けにくいと考えられている。
このため、着床や流産の仕組みを解明する不妊治療などの基礎研究への活用が期待されているが、その具体的な指針や規制はなかった。
報告書では、胚モデルについて「現状では『人』として誕生しうる存在ではないことは明らか」として、14日ルールのようなヒト胚と同様の規制は必要ないとした。
一方、ヒトや動物の胎内に移植することは「科学的合理性がなく、倫理的にも許容されない」として禁じた。研究する際には国への届け出が必要だとした。
胚モデルを巡る研究は近年、急速に進んでいる。2017年にマウスで報告され、21年にはオーストラリアの研究者が初めてヒトのiPS細胞から作製した。実際に14日を超えて培養したケースもあり、羊膜などの組織が再現できたとする研究もあるが、ヒトや動物の個体ができたとの報告はない。
報告書ではこうした点を踏まえ、実際に個体ができる段階まで研究が進んだ場合、規制を見直すことも必要だとした。【渡辺諒】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。