産業技術総合研究所の竹村謙信主任研究員と本村大成研究チーム付らは、微細な構造の金型を室温で作る技術を開発した。熱で原型の構造が崩れるのを防ぐことで、トンボの複眼の形をした金型作製にも成功した。微細構造が持つ優れた性質を産業に応用しやすくなる。
生物は大きさがナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微細な「ナノ構造」を持つ。ナノ構造には、はっ水性や接着性など有用な性質を持つものがある。工業的に生産するためには、原型のナノ構造を低コストで金型に写し取る精密な加工技術が必要になる。
通常の金型作製では、金属の微粒子を原型に向かって飛ばして薄膜をつくる。ただ微粒子と一緒に飛び出す電子などによる熱の影響で、原型の構造が壊れることがある。
竹村主任研究員らは、電子などが原型に衝突しないように微粒子だけを吹きつける技術を開発した。トンボの複眼を原型として、金型の土台となる微粒子の薄膜をつくった。薄膜をニッケルでメッキして、トンボの複眼の構造を維持したまま金型をつくった。金型に樹脂などを流し込み、トンボの複眼の形をしたレンズをつくることができた。
一つ一つの眼の大きさは直径約40〜60マイクロメートル(マイクロは100万分の1)メートルだった。レンズの表面で曇り止めの役割を果たすナノサイズの凹凸も再現できた。ナノ構造だけでなく、従来は金型に写し取れなかった熱に弱い材料でも原型にできると期待される。
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