北海道幕別町は3日、忠類地区(旧忠類村)でナウマンゾウの頭骨の化石1点が見つかったと発表した。1969~70年の調査により、国内で初めて氷河期に生息したナウマンゾウのほぼ1体分の骨格化石が発掘された現場で、同一個体のものとみられる。【鈴木斉】
新たに見つかった化石は、ナウマンゾウの頭骨の一部で、内部に空洞がある「含気骨(がんきこつ)」と呼ばれる部位。大きさは縦、横ともに7センチほどだ。10月25日の発掘調査中に町教育委員会の添田雄二学芸員が含気骨を含む岩盤(母岩)を発見した。
発見地点は54年前の調査でナウマンゾウの骨格化石が見つかった場所で、約12万年前の地層。2023年10月の調査で未発掘の地層が残っていることが確認され、今年10月はその地点を中心に発掘を進めていたという。帯広畜産大学(帯広市)で近縁とされるアジアゾウの頭骨の骨格標本を使って照合、鑑定した結果、ナウマンゾウの頭骨と確認された。
忠類地区のナウマンゾウの化石を基に1972年、全身の復元骨格が作製された。しかし、頭骨の発見が少なかったため、頭部は千葉県と静岡県で発掘された化石をモデルにつくられていた。添田学芸員は「今後の調査で頭骨片の発見が続けば、忠類産ナウマンゾウのオリジナルの頭骨を復元できる可能性も出てくる」と期待を寄せる。
ナウマンゾウは長い牙が特徴のゾウの一種で、氷河期の日本に生息した。1969年7月、忠類地区の農道工事現場で歯の化石が見つかった。70年に始まった本格調査で骨格化石も発掘された。ナウマンゾウの化石は国内各地で見つかっているが、ほぼ1体分がその場で発掘されたのは忠類地区だけだ。学術的に貴重な現場とされている。
現在も現場は「ナウマン象発掘跡地」として保存され、発掘状況が分かる「発掘産状模型」などが展示されている。2008年の地質調査で、ナウマンゾウの足跡化石も見つかった。町は19年から毎年、現場で数日間の集中的な発掘調査を行っている。
添田学芸員は「新発見の化石は7センチ程度の小さなものだが、今後の発掘や新たな化石発見に向けて、大きな一歩になる。研究や生涯学習事業を進める上でも重要な意義を持つ」としている。
町、22日に報告会
町は22日、忠類地区にある忠類ナウマン象記念館で緊急報告会を開き、今回の発掘の意義を発表する。また、54年ぶりに発見された化石の現物を展示する。
22日午後1時半のスタートで、化石の鑑定者の足寄動物化石博物館(足寄町)前館長、澤村寛学芸員と添田学芸員が状況を解説する。入場無料。定員40人。電話で、忠類ナウマン象記念館(01558・8・2826)への事前申し込みが必要となる。
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