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<軽度の認知機能障害を発症した人々は、心理的幸福感の低下を早く経験していることが判明。特に顕著だった要素とは?>
年齢を重ねるにつれて、目的意識や自己成長を感じられない──
この感覚が認知症の早期警告サインになる可能性、そして心理的な幸福感と記憶の衰えが密接に関連していることが最新研究でわかった。
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2014年の「アメリカ疾病予防管理センタ(CDC)」のデータによると、65歳以上のアメリカ人の500万人以上が認知症を患っている。認知症にはさまざまな種類があり、最も一般的なものとしてアルツハイマー病がある。それは記憶能力、思考能力、意思決定能力の低下を特徴とする。
認知症の原因は完全に解明されていないが、遺伝要因と環境要因が関連していることがわかっている。
これまでの研究では、うつ病、心理的幸福感の低下、また記憶の衰えの間になんらかの関係性があり、それぞれが他の要因に影響を与える可能性が示唆されてきた。
今回、中国農業大学、スウェーデンのカロリンスカ研究所、およびシカゴのラッシュ大学医療センターの研究者たちが、認知機能が健全な910人の高齢者の認知機能の低下と認知症の発症過程における心理的幸福感の変化を14年間にわたって毎年追跡調査を行った。
心理的幸福感の6つの要素である「自己受容」、「自律性」、「環境制御力」、「人生における目的」、「積極的な他者関係」、「人格的成長」が測定され、軽度の認知機能障害や認知症の兆候も合わせて評価された。
その結果、軽度の認知機能障害を発症した人々は認知機能が維持された被験者と比較して、心理的幸福感の低下を早く経験していることが判明。
特に「人生における目的」が3年、そして「人格的成長」が6年と、認知機能の低下が顕著になる前からそれぞの要素が低下していることがわかったのだ。
このことより、明らかな認知機能障害がないにもかかわらず、心理的幸福感の低下が将来的な脳機能障害の早期警告サインとなる可能性があると結論づけた。
「『人生における目的』と『人格的成長』が、他の幸福感の要素よりも認知機能に深く関連する可能性がある。このことが認知症の指標として役立つ可能性があることを示唆する」と書かれている。
この研究ではこれらの要因に関連性があることを示しているだけで、その関連性を裏付けるメカニズムはまだ明らかになっていない。しかし、これらの要因は双方向的である。
記憶形成や回復にかかわる重要な脳の領域において、うつ病やストレスが脳構造の変化を引き起こすことは知られている。また、認知機能が失われているように感じることで、無力感や孤独感が悪化することもある。
したがって認知機能の低下を遅らせたり、抑止するためにそれぞれの要因の関連性とメカニズムの解明など、さらなる研究が期待されている。
認知症とは何か?
What is dementia?/National Institute on Aging前を向いて、出会い、つながる。そこに「希望の道」がある。認知症とともに歩いていこう。/厚生労働省
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