1969年7月20日、米国はアポロ11号で初の有人月面着陸を果たした(NASA提供)

米国のアポロ11号が月面に着陸したのは1969年7月20日(米東部時間)でした。着陸の様子は地球に衛星通信で生中継され、人類史に残る快挙を世界の人々が固唾をのんで見守りました。月面に降り立ったニール・アームストロング船長が残した「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類には偉大な飛躍だ」という名言は歴史に刻まれています。

当時は米ソの激しい覇権争いを背景に、ケネディ米大統領が「10年以内に人類を月に送り込む」というアポロ計画を掲げ、米国が有人の月面着陸レースを制しました。それから55年。人類は再び、月を目指し始めました。中国が月の裏側に世界で初めて着陸して試料を地球に持ち帰り、米国は対抗意識を強めています。国家だけでなく民間企業も月面探査計画に向けて一斉に動き出しました。

宇宙探査が新時代を迎えるなか、世界の月面探査競争や民間宇宙ビジネスの動き、宇宙開発のルールを巡る世界の綱引きなどの最前線を追ったビジュアルデータ「解剖 経済安保 スペースウォーズ」の連載をまとめました。

(1)月面探査の夜明け 米中激突、決戦の地は「南極」


遠い昔、はるかかなたにあった月が、人類にとって身近な存在になってきた。米国が月まで100人を運べる大型宇宙船の実用化を視野に入れ、中国は月の裏側から試料を持ち帰るなど、米中が月面探査計画を競う。宇宙開拓の舞台は地球近傍を超えて月面まで広がった。実現にはロケットや人工衛星、エネルギーなどの様々な技術の粋が求められ、国の科学技術やイノベーション力の基盤となる。経済安全保障上の重要性も高まった宇宙開拓の今とこれからをビジュアルデータで解剖する。
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(2)NASAの逆襲 スペースXを支援 民間の力を解放
米国の宇宙開発に不可欠なのが、イーロン・マスク氏率いるスペースXだ。6月に史上最大の宇宙船「スターシップ」の打ち上げと帰還に成功した。月面有人探査計画「アルテミス」では、宇宙飛行士を月に送る。マスク氏のカリスマ経営で成長してきたスペースXだが、歩みをひもとくと、実はある巨大な組織の影が浮かび上がる。米航空宇宙局(NASA)だ。1980~2000年代に相次ぐ事故で宇宙開発の司令塔としての信頼を損なったNASAだが、民の力を活用する戦略に転換し、マスク氏と「二人三脚」でロケット世界最大手に成長したスペースXを支え続けている。
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(3)「月の時間」を握る国は? 宇宙統治巡り各国火花
宇宙の時空を誰が握るか――。米中の覇権争いは地球外に飛び出した。フロンティアに誰が先に到達するかという早さの争いにとどまらず、ルールメーキングでどこが先んじるかという新たな段階に入った。各国が独自法を相次ぎ制定し、無秩序の宇宙資源の開発競争につながる恐れも出てきた。人類が大海原に進出した大航海時代は、ルールで他国を抑えた英国が先行していたポルトガルやスペインを出し抜いて覇権を握った。宇宙開拓でも同じ道をたどるのだろうか。宇宙統治(コズミック・ガバナンス)を巡り、世界各国は火花を散らす。
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米中で月面争奪、新・大航海時代 日経LIVE 7月30日午後6時から生配信
地球から月へ。各国・企業が宇宙空間に漕ぎだす「新・大航海時代」が始まっています。月の裏の土壌を地球へ持ち帰るチャレンジに世界で初めて成功した中国。スペースXなど民間の力も結集して追う米国。宇宙強国を目指す技術開発は「軍民両用」(デュアルユース)として経済安全保障にも直結します。日本でも広がりつつある宇宙ビジネスの動きを含め、月面争奪戦の現状と今後を考えます。…概要を読む

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