大阪大学の審良静男特任教授らは、免疫細胞の一種「ナチュラルキラー(NK)細胞」によるがん治療法の詳しい仕組みを解明した。NK細胞を遺伝子操作することでがん組織の内部にとどまりやすくなり、固形がんに効きやすい可能性がある。実際にがんの成長を抑えられることを動物実験で確認した。

がん免疫療法は体に備わる免疫の働きを生かす治療法だ。免疫細胞の一種であるT細胞の攻撃にブレーキがかかるのを防ぐ免疫チェックポイント阻害剤や、遺伝子操作で攻撃力を強めたT細胞を投与する「CAR-T(カーティー)細胞療法」がある。ただ固形がんの内部に免疫細胞を効率よく集めて攻撃させるのが難しい。

研究チームはNK細胞を遺伝子操作して特定の酵素を作れなくすると、がんを攻撃する能力が高まることに注目した。細胞を詳しく調べると、酵素が無い環境では免疫に関係するたんぱく質「インターフェロンガンマ」を多く作っていた。

このたんぱく質ががんの内部にいる樹状細胞やマクロファージなどの別の免疫細胞に作用して「CXCL16」という物質を作らせることも分かった。この物質は免疫細胞の移動に関わる。酵素を作れなくなったNK細胞はがんの内部で生じるCXCL16に反応しやすくなり、がん組織内にとどまりやすくなった。

固形がんを移植したマウスにこのNK細胞を投与するとがんはほとんど大きくならなかった。通常のNK細胞を投与したマウスではがんが増大した。

がん患者からNK細胞を取り出した後に遺伝子操作して投与すれば、固形がんに集まってとどまり治療効果を得られる可能性がある。他のがん免疫療法と組み合わせて効果を高めることも可能とみている。孫欣特任研究員や大塚製薬の永浜康晴室長らとの研究成果で、論文が米医学誌「イミュニティ」に掲載された。

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