地震でできた亀裂に頭を悩ませる柳田尚利さん=石川県能登町で
◆加工場も加工の機械もダメージを受けた
「根がむき出しになって乾いてしまっている。今年どれだけ実を付けてくれるか不安はある」。能登町合鹿の農園で、柳田さんが表情を曇らせた。干し柿用の木200本とブルーベリーの木50本を植えた2.6ヘクタールの畑には100メートルほどにわたり、70センチほどの段差ができた。「通常なら作業車で行う手入れが遅れがちだ」と肩を落とす。 輪島市町野町真久の加工場も壁がはがれ、干し柿を作るのに使う大型の乾燥機や皮むき機がゆがんだ。近くの自宅も「天井に穴が開いて空が見える」状態。多額の修繕費が見込まれる。◆おいしいと言ってくれる人たちのために
柳田さんは大阪府東大阪市出身。2012年、奥能登の農業法人のインターンシップ(就業体験)に応募して農業を一から学び、17年に独立した。ここで出会った妻との間に長女(10)も授かった。「自分の子どもが安心して口に入れられる柿を作りたい」。そんな思いから、有機肥料や化学肥料を使わない栽培を追い求めた。大きさでは劣っても糖度が高く、雑味が少ない柿を作ってきた自負がある。 元日の地震発生時は奥能登にはいなかったが、2次避難を余儀なくされた。「奥能登を離れることも考えた」というが、自身が作る柿をおいしいと言ってくれる人たちに励まされ、踏みとどまることを決めた。「戻ると決めた以上、もっとおいしい物を作って能登の魅力アップにつなげたい」と力を込めた。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。