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 今、強烈な個性を放つ企業と社長が注目されている。会社の名前はグローバルパートナーズ株式会社。デジタルマーケティング事業、海外進出支援事業などを手掛けるが、注目された理由は、合言葉「ゾス!」とパワハラ上等ともいえる山本康二社長のキャラクターだ。

【映像】社内に響き渡る「ゾス!」の声

 オフィス内では、気合いを入れるために挨拶や上司への返事として使われる「ゾス!」という言葉が飛び交う。さらに、何かとコンプライアンスが厳しい時代にありながら、山本氏が部下に投げる言葉も、また強烈。この様子がSNSで公開されると、一気にバズった。見るからにパワハラという熱血指導だが、それを受けている若手社員たちからは「指摘してもらえてありがたい」「怒られているけど、その分信頼してもらえている」と肯定的に受け止める言葉が飛び出す。また山本氏も「褒められるよりも厳しく、あの昭和の感じの方が絶対に伸びるし、そういうやつがここに集まっている」と胸を張る。

 『ABEMA Prime』では、コンプラ・パワハラなど気にせず、しかも自らの行動から収入までフルオープンにして活動する山本氏に、現代社会に思うことを聞いた。

■気合いを入れる挨拶「ゾス!」

 山本氏は新卒で光通信に入社後、28歳で取締役に就任。その後、数々のIPOを経験すると1万人の組織、100万社の顧客、売上累計1兆円、時価総額数兆円を構築してきたやり手で、2009年にはソフトバンク・孫正義氏、アリババのジャック・マー氏から出資を受け独立。現在の会社を立ち上げた。社内で合言葉になっている「ゾス!」は光通信時代から使っていたもので「今年になってから急に注目されて、僕も驚いた。『お疲れっす』とかがだんだん短縮されただけ」だという。この「ゾス!」も1.0、2.0と経て、現在は3.0に入っているという。「1.0の時代は、上司がもう言いたい放題、やりたい放題。2.0は遠慮せず、言葉を選ばず、社員も上司に対して ガンガン言いたいことを言える。3.0は、世の中に対してもガンガン言う。社内でやっていることはフルオープン。社長や役員、同僚の給料、原価や仕入れ、利益も全社員が知っている」と、時代とともに単なる上下関係から、上司・部下がお互いを全て見せ合う関係へと変化した。

 珍しい合言葉とともに、コンプラ時代に思わずヒヤッとする山本氏の厳しい指導も相まって、SNSで一気に拡散した。「今の世の中は言葉を選んだり、ハラスメントだとかブラックだとか、どんどん厳しくなっている。テレビも学校の先生も、政治家も大企業も全部そう。それだとちょっともう、本音と建前とかやっていられない。俺らは素直に正直に思ったことをその場で言う、『遠慮は悪』だと言ってやっている」。動画でも見られる厳しい指導に対して、尻込みして敬遠する動きもあるように思えるが、入社を志望する若手は「もっとアニマル的、本能的にやりたいという意見が増えてきている。今、セルフブラックという言葉があるが、自分で自分をもっと追い込みたい、もっと厳しく指摘を受けたいという人がいる。そういう人たちはホワイト(企業)だと放置される。ずっと配慮の繰り返しだ。社内で『かわいいね』と言うと、人事部に呼び出される。ここまで来ると、もう揺り戻しが来ていて、多くのベンチャー企業が息苦しいから社風を(昔に)戻そうとなっている」。

■エントリーメールに「ぜひしごいてください」

 書類を出し、面接を受け、採用されて入社してみたところ、イメージと異なりすぐに退社する若者もいる中、グローバルパートナーズでは、そんなミスマッチは少ないという。山本氏の言動から予定まで、さらに社内の雰囲気までネットを通じて“丸出し”にしている分、ギャップが生じにくいからだ。「採用はYouTubeで面接し、録画したものをアップする。会社案内でも、TikTokで社内の日常を、僕の許可なく社員がどんどん上げている。飲み会でも僕がテキーラを飲むところを出している。エントリーメールに『ゾス!』って書いてあるし『ぜひしごいてください』と。学歴はMARCH以上や慶應もいるしバラバラ。中卒もいる。あと8割以上がバイリンガルで、社員も役員も半分は女性だ」。もちろん全員がフィットするわけでもないが「あまりやる気がない人、落ち込んでしまう人は来なくていいし、そういう人たちはホワイトな会社に行けばいいと思う」と割り切っている。それでも、これまでに訴えられたことなどはないという。

 大企業になるほど、ハラスメントやコンプライアンスの意識、周囲からの視線も厳しくなるが、山本氏が危惧するのは、これから成長していこうと大企業以上に活力が求められるベンチャー企業にまで、その“圧力”がかかっていることだ。「僕が問題だと思っているのは、ベンチャー企業が大きな流れ、同調圧力みたいなものに乗って、どんどんホワイトにしている。あれが気持ち悪い。やる気があって、寝る間も惜しんで稼ぎたい、業界を変えたい、大企業を抜きたいという人たちはいっぱいいるが、そこにまで過度にハラスメント禁止とかホワイトになれという圧力が来ている。それでは日本の新陳代謝が起きない。僕ら中小企業、ベンチャーは、そんなのに合わせていたら絶対儲からない。そう思って、ありのままをやっていたら、それを見たベンチャーたちが気づいたし、大企業の中でもちょっと揺り戻さなきゃとなってきた。企業は上場したらディスクロージャーで財務も開示するが、カルチャーも出すべきだと思う。株主のために寝ないで働いている、気合いを入れて働いていると出したら株価は上がる。上場したらお上品じゃなきゃいけないというのは、まやかしだ」。

 この一貫した姿勢に、2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「『隠すことがない』というのが結構大事。最近のホワイト企業では、勤務時間でいろいろやらされているけど、これに何の意味があるのか、やっていることが本当に役に立っているのか、自分自身の能力が本当に上がっていて正しいのか、わからなくなっている。この案件はお前が取って利益がいくらだとか、俺のおかげで100万円儲かったから、もっと給料をもらっていいとか自分の成果が見えて周りにも評価されるという関係の方が生活しやすい人もいる。この時代だからこそだ」と語った。

■山本氏「もう堅苦しい。もっと自由な発言に持っていかないと」

 グローバルパートナーズでは、全社員を"経営者予備軍”だとして育成を行っている。その中の取り組みの一つが査定だ。「3カ月に1回、査定期間がある。あいつがずるいとかフェアじゃないとなったら、新しい評価制度を社員たちが議論して決める。自分の給料やボーナスも自分たちで決める。たまに会社は単月赤字になるが、社員が間違えて還元率を上げすぎたからで、『これでは持続可能性がない』と下げたりする。飲食店に例えたら、社員に仕入れ、味付け、値付け、採用も広告宣伝も全部やってみろということをやる。30年間で700人、社長を作った。たぶん日本記録だと思う」。

 そして山本氏は、改めて現在の風潮に疑問を投げかけた。「今年の流行語が『不適切にもほどがある』からだったが、それを考えると『適切にもほどがある』だ。もう堅苦しい。もっと自由な発言に持っていかないと。もっとガンガンやった方がいい。僕は本当にやる気のない子、心の弱い子にスパルタはやらないが、世の中の風潮がホワイトで、会社で思いっきり暴れられない人が何十万人もいる」。 (『ABEMA Prime』より)

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