「こども若者シェルター」は児童相談所の施設での生活を望まない子どもや、18歳以上で家庭などに居場所がない若者などの利用を想定し、こども家庭庁は都道府県などに費用を補助する事業を今年度から始めました。
民間団体が運営する若者向けシェルターに自治体が委託することなどが想定されていますが、統一の運用ルールがないことなどから事業への参加は広がっていないのが現状です。
こうした中、こども家庭庁が設けたガイドライン作成のための有識者による検討会で、20日、国がガイドライン案を初めて示しました。
案では18歳未満の子どもがシェルターを利用する際の親権者の同意について、事前に同意を得ることが困難な場合は同意がなくても差し支えないとしています。
一方で、シェルターを運営する事業者から親権者に子どもがシェルターを利用していることなどを速やかに連絡する必要があるとしたうえで、連絡を受けた親権者が子どもの引き渡しを求めている場合は、児童相談所に相談し、一時保護の委託を活用することが考えられるなどとしています。
検討会のメンバーからは、「親権者への連絡を事業者がすることに抵抗があるのではないか」とか「シェルター側が法的なトラブルのリスクを負わないための配慮が必要だ」といった意見が出されていました。
こども家庭庁は議論を踏まえ、年度内にガイドラインをまとめることにしています。
民間のシェルターは
全国には民間の団体が運営するこどもや若者向けのシェルターが少なくとも20か所ほどあります。
このうち、20年前からシェルターを運営している東京 北区の「カリヨン子どもセンター」では男女それぞれ6人が入所できる民家を借り上げるなどしてシェルターとし、これまで10代後半の子どもや若者を中心におよそのべ550人が利用してきました。
利用する子どもや若者は、過去に児童相談所の一時保護所などの施設を利用した際に、生活になじめなかった経験などがあり、相談窓口を通じて利用につながったケースや、18歳以上で居場所がないといったケースも少なくないということです。
ここでは本人が希望した場合は2か月程度の期間、無料で利用でき、生活支援のほか外部の弁護士とも連携し保護者や児童相談所などとの調整も行っています。
「カリヨン子どもセンター」の石井花梨事務局長は、シェルターで子どもを預かる際の課題などについて、「子どもを受け入れている団体はいろんな意味でリスクを負っていて慎重になると思うので、想定されなかった事態が起きた時に、行政機関などに一緒に代替案を準備してくれるような備えがあれば安心して運営できる」と話していました。
また、「子どもにとっては居場所がないことがより深刻な状況につながってしまうこともある。困っている子どもたちはどんどん都市部に逃れて居場所を求めるという傾向があり、都市部ではもっとシェルターが必要だし、居場所の選択肢が増えることは必要だ」と指摘しました。
利用経験ある男性「子どもが選択肢を持てることが大切」
10代の頃に子ども向けのシェルターを利用した経験がある男性は、「子どもが選択肢を持てることが大切だ」と話しています。
首都圏に住む20代の男性は、親からの虐待が続く中、高校3年生だった18歳の時「家を離れなければ自分がだめになってしまう」とインターネットで子ども向けのシェルターを見つけ、みずから入所を決めました。
男性は、中学生の時に児童相談所に保護され、一時保護所で過ごした経験がありましたが、施設での生活のルールなどになじめなかったこともあり、別の場所を探していたといいます。
男性はシェルターに2か月ほど滞在したのち、民間団体が運営する自立援助ホームに移り、アルバイトをしながら高校を卒業することができたといいます。
国がシェルターの整備を進めることについて、男性は「みずから家を離れたいと思っている子どもが、選択肢を持つことができるというのがすごく大切だと思う。シェルターの数や知ってもらう機会を増やすとともに、子どもが利用したいと思えるシェルターを作ってほしい」と話していました。
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