年金制度改革で、焦点のひとつになっているのが第3号被保険者制度だ。会社員に扶養されている配偶者が基礎年金を受け取れる制度で、5年に一度見直しが行われる。厚労省は廃止などをふくめた制度改革の議論を、今回は見送ったが、経済界などから「廃止すべき」という声はやまない。
【映像】こんなに違う!共働き世帯 対 専業主婦世帯
年収が130万円を超えると扶養から外れる、いわゆる「年収の壁」が、多様化する働き方の中で勤労意欲を妨げるとの声もある一方、「働きたくても働けない人を切り捨てるのか」「専業主婦は年中無休の労働だ」といった反応もある。『ABEMA Prime』では、いわゆる“主婦年金”を廃止すべきか存続すべきか、それとも別の選択肢があるのか考えた。
■主婦・主夫が優遇されすぎ?「第3号被保険者制度」
「第3号被保険者制度」とは、年収130万円未満の会社員の配偶者などが、年金・保険料の負担なく基礎年金を受け取れる制度を指す。国民年金(基礎年金)は日本在住の20〜59歳が加入するが、自営業・学生などの「1号」は1405万人(以下、人数は2022年度末)、会社員・公務員などの「2号」は4618万人、会社員などに扶養される配偶者の「3号」は721万人(女性709万人、男性12万人)となっている。なお、2号被保険者には「2階」部分として厚生年金もある。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「世帯年収800万円の専業主婦は年金がもらえて、働きながら子育てをする一馬力のシングルマザーはもらえない。これは明らかな差別ではないか」と語る。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は、「働けない人もいれば、“専業主夫”もいる。夫が会社でうつになり、妻の3号被保険者になる家庭もある。ケアする方法は千差万別だ」と説明し、「個々にケアするシステムがないままに、3号を廃止すると、困っている人をますます困らせることになる」と指摘する。「困っている、困っていない。子育てしている、していないの線引きができない現状では、ちゃんとしたシステムができるまでは残しておくべきだ」。
政治学者の岩田温氏は、「専業主婦はお金にならず、価値がない」といった意見に強く反論し、「多様性の時代では、『自分で育てたい』という人に向き合ったシステム構築が必要だ。『専業主夫は働いてない』という偏見がある」と問題点を指摘した。
時代に合わせた年金制度の議論の重要性に触れつつ、「労働力が減っているのは事実だ。生産人口が減少する中で、移民が入ると問題が起きるとなった時に、女性の社会進出はやむを得ない。人口が右肩上がりに増える時代に作ったシステムを維持し続けることには矛盾がある」とした。
■共働き世帯は専業主婦世帯の3倍
2024年版「男女共同参画白書」によると、専業主婦は404万世帯、共働きは1206万世帯と、約3倍の開きがある。1985年時点では専業主婦936万世帯、共働き718万世帯だったが、1990年代に半々となり、2000年前後から差が大きくなっている。
薄井シンシア氏は、17年にわたる専業主婦の間は、3号被保険者だった。「子育てが終わり再就職して、2号になった」と、両方を経験した立場から「国連のレポートによると、無償労働はほとんど女性がやっているため、3号はあってもいいと思う」と語る。
少子化対策の側面もあるようだ。「女性が子供を産まないのは、みんな将来が不安だからだ。子供の未来は教育無償化などの政策があるが、産む女性自身への対策はない。共働きでも子供が不登校になれば、2〜3割の人が離職するが、大抵は女性だ。女性のセーフティーネットとして3号がある」。
一方で、女性に対しては「3号があるからと言って、ずっと働かずに専業主婦をやると、女性の貧困につながる」と警鐘を鳴らし、「今は人手不足で、少し探せば仕事がある。3号から離れて、2号への移行にチャレンジしてほしい」と背中を押す。
荻原氏は、薄井氏のアドバイスが、すでに進みつつあると語る。「本人が働きたいかどうかに関わらず、サラリーマン家庭の収入がぜんぜん増えない。妻が働きに出ざるを得ない家庭も多く、専業主婦でも、昔に比べて4割ぐらいは働きに出ている。この流れが続けば、どんどん専業主婦は減っていく」。
■夏野剛氏「本当に働けない、助けたい人だけを対象に」収入ある人は全員、厚生年金加入を
近畿大学 情報学研究所の夏野剛氏は、「離婚率が30%を超え、専業主婦もいつまで結婚するかわからない現代において、この制度は時代遅れだ」と感じる一方、「メリットを受けている人がいるなら、発想を逆転させる」と提案する。
具体的には、現状は「年収130万円未満」となっている3号の加入条件を「30万円ぐらいにすればいい」という。「いろんな事情で働けない人は、100万円までも働けない。これを30万円や無収入に限定すれば、本当に助けたい人だけを対象にできる」とのアイデアを示した。 (『ABEMA Prime』より)
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