東京、神奈川などの158人は、1970年代後半からの車の排気ガスによる大気汚染でぜんそくなどを発症したにもかかわらず救済措置が十分ではないなどとして、国と自動車メーカー7社に対し、治療費など1人当たり100万円の損害賠償を命じるよう公害等調整委員会に申し立てています。

大気汚染の影響を受けたとされる患者に対しては、16年前、東京都が過去の裁判での和解内容を踏まえ医療費を全額助成する制度を設けましたが、その後、新規の認定が停止され費用も一部自己負担となったほか、そもそもこうした助成制度のある自治体が限られているとして、患者らは、全額助成の制度を全国一律で設け、国や自動車メーカーが必要な財源を拠出するよう求めてきました。

19日は双方が主張を述べる10回目の審問が行われ、ぜんそくの患者の女性が「ぜんそくを発症して生活が一変した。苦しみや経済的負担はすべて自己責任で解決しなければならないのか。これからは治療費が軽減され、生きる喜びを感じて暮らしたい」と述べた意見書が読み上げられました。

一方、国やメーカー側はこれまでの審問で「適切な対応を取ってきた」などとして、いずれも法的責任はないと主張しています。

審問は19日で終わり、公害等調整委員会は今後、双方の最終的な意見を聞く非公開の協議を行うとしましたが、ここで合意に達しなければ、来年にも国や自動車メーカーに賠償の責任があるかどうかの裁定を出すと見られます。

公害等調整委員会とは

公害等調整委員会は大気汚染や土壌汚染、騒音や悪臭などの公害についての紛争を処理する国の機関です。

被害者を迅速に救済するため、民事裁判に比べて手続きが簡単で費用も少ないことが特徴とされています。

当事者の申し立てを受けて公害等調整委員会が双方の意見を聞いたり証拠調べをしたりする「審問」を行い、損害賠償責任の有無や被害の因果関係について法的な判断をする「裁定」を行います。

このほか、公害等調整委員会が双方の間に入って話し合いを進める「調停」という手続きもあります。

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