自転車の『スマホのながら運転』と『酒気帯び運転』が、11月1日から罰則強化されましたが、違反をしている人が多く見られます。
“ながら運転”や“飲酒運転”による自転車の重大事故の実例をみていきます。
■相次ぐ自転車事故 歩行者と衝突で死亡のケースも
自転車の重大事故です。
12月8日、東京都三鷹市で、16歳の女子高校生が自転車に乗って帰宅途中に、散歩中の85歳の男性と正面からぶつかりました。
男性は、後頭部を強く打って死亡しました。
事故当時は、日没後の午後5時ごろで、辺りは暗くなっていました。
自転車は、緩やかな坂道を下っていて、自転車に乗っていた女子高校生は、イヤホンや携帯電話は使っていませんでしたが、「寒かったので下を向いていた」と話しています。
山形でも、2023年11月、会社員の31歳の男性が、下り坂の歩道を時速約35キロで走行していたところ、歩いていた59歳の男性と衝突し、死亡させました。
警察官も事故を起こしています。
2023年10月、佐賀県小城市で、50代の男性警察官が自転車で通勤途中に、横断歩道を青信号で通行していた70代の男性と衝突しました。
70代の男性は、頭の骨を折るなどして、死亡しました。
自転車と歩行者の事故は、ここ数年増加傾向です。
2023年は3208件事故が起きていて、前年から303件増加して、過去20年で最高です。
このうち、歩行者が死亡、重傷となったのは、358件でした。
■莫大な賠償責任を負うケースも
自転車による事故で、莫大な賠償責任を負うケースもあります。
男性が信号無視をして、横断歩道上の55歳の女性と衝突して、女性が亡くなってしまったケースです。
東京地裁は2007年、男性側に5438万円の賠償命令を出しています。
11歳の男子小学生が、帰宅中に、62歳だった女性と衝突し、女性が意識不明の状態になったケースです。
神戸地裁は、2013年、小学生側に9521万円の賠償命令を出しました。
なぜ、ここまで高額な賠償となったのでしょうか。
高山俊吉弁護士によると、「被害者の女性の意識が戻らなくなったのが大きい」ということです。
後遺症への賠償だけでも、介護費用で約3900万円、逸失利益が約2200万円、また、後遺症の慰謝料で約2800万円かかるということです。
このほかに、治療費や休業補償も加算されたということです。
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■あなたは大丈夫?やりがちな自転車のルール違反■あなたは大丈夫?やりがちな自転車のルール違反
重大な事故につながるリスクもある自転車ですが、ついやってしまうルール違反です。
<1>傘さし運転
50代女性「周りもやっているからやってしまう。それに、自転車の違反行為には、周囲の目も甘い気がします」
<2>徐行せず歩道通行
60代女性「自転車は、エンジンもなく人力なので、車両というより歩行者に近い感覚でスピードを出していた。違反だと思っていなかった」
<3>2人乗り
男子高校生「2人乗りは、遊びみたいなものでやっている。自転車なら転んでけがしてもしれている」
なぜ、自転車の交通ルールを守らないのでしょうか。
「ルールをよく知らない」が40.4%、「守らなくても危険性がないと思う」が23.2%、
「周りも守っていない」が15.3%です。
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■「ながらスマホ」罰則強化も違反続出 なぜ?■「ながらスマホ」罰則強化も違反続出 なぜ?
11月から、『ながらスマホ』に対する罰則が強化されました。
自転車の運転中にスマホなどで通話したり、画面を注視する行為が禁止されました。
違反すると、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金です。
また、事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
これらは、自動車での『ながらスマホ』と同じ罰則です。
すでに検挙された事例もあります。
熊本市で11月8日、10代女性がスマホを手に持ち、SNSの画面を見ながら自転車で走行していたところを、パトカーが気づいて検挙。
宮城県内では、11月の1カ月間で、『ながらスマホ』で14人が検挙されています。
『ながらスマホ』が絡む死亡・重傷事故は、2024年1月〜6月で、全国で18件あり、これは統計が残る2007年以降最多だということです。
このうち1件は、死亡事故です。
街の人の声です。
ながらスマホをしたことがあるという30代の男性「SNSで大事なやり取りをしている時は、運転中でも返事が気になって、見たりいじったりしてしまう」 60代のタクシー運転手
「はっきり言って、自転車はタクシーにとって一番の天敵。スマホ見ながらふらふら車道を走ってて、ひっかけそうになって青ざめたことが何度もある」
そしてこんな疑問です。
40代女性「運転しながら、スマホで地図は見ます。『注視』ってどのくらいの時間ですか?また、自転車にスマホを固定してたら良いですか?」
高山弁護士によると、
●注視は3秒以上が目安
●その目安は、スマホを固定していても同じ、
だということです。
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■逮捕者相次ぐ「酒気帯び運転」 罰則は自動車の場合と同じ■逮捕者相次ぐ「酒気帯び運転」 罰則は自動車の場合と同じ
自転車での『酒気帯び運転』についてです。
これまでも禁止されていましたが、11月1日からは罰則の対象となりました。
3年以下の懲役または50万円以下の罰金で、自動車での酒気帯び運転と同じ罰則です。
愛知県一宮市では、50代の男性が、『酒気帯び運転』の疑いで現行犯逮捕されました。
パトロール中の警察官がふらついている自転車を発見し、検査の結果、基準値を超えるアルコールが検出されました。
「酒を飲んで自転車に乗ってはいけないことは、知らなかった」と話しています。
都内でも、台東区で酒を飲んだ状態で自転車を運転していたとして、『酒気帯び運転』の疑いで、40代の無職の男が現行犯逮捕されました。
捜査関係者によると、客を下ろすため、路上に停車中だったタクシーに後ろから追突し、基準値の約7倍のアルコールが検出されたということです。
逮捕された男は、「自宅で缶チューハイを4杯くらい飲んだ。飲酒運転しても、事故は起こさないと思った」と話しています。
さらに、広島市でも、陸上自衛隊所属の27歳の男が、『酒気帯び運転』の疑いで現行犯逮捕されました。
男は、ライトをつけずに自転車を運転して、警察の呼びかけに静止せず、100mほど走行しました。
基準値の2.6倍のアルコールが検出されています。
■自転車の飲酒運転「5分の距離なら」誤認識も
自転車の飲酒運転について、街の声です。
20代の男性「酔った人が、前から蛇行運転して来た。けがはしなかったが、軽くぶつけられた」 20代の女性
「夜遅くに暗い中、自転車がフラフラしながら前から来たので、危ないと思い、歩行者の自分が歩道をよけた」 一方で、お酒を飲んで自転車を運転したことがある30代の男性は、
「酒を飲むとわかっていても、友達の家や実家など5分ぐらいの距離なら、大丈夫だと思って乗ってしまう」といいます。
お酒を飲む習慣がある人に、
『お酒を飲んでも、自転車であれば運転しても大丈夫だと思うか』と聞いたところ、
「そう思う」が16.7%で、約6人に1人がこうした認識を持っているという結果になりました。
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■「酒気帯び運転」本人以外も罰則!こんな行為に注意■「酒気帯び運転」本人以外も罰則!こんな行為に注意
自転車での酒気帯び運転の本人以外への罰則です。
<1>酒気帯び運転をする恐れがある人に自転車を提供した場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金
<2>お酒を飲んでいると知りながら、送ってほしいと頼み、一緒に乗った場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金
<3>酒気帯び運転をする恐れがある人にお酒を提供した、またはすすめた場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金
埼玉県内の居酒屋です。
お店は駅から離れた住宅街にあり、お客さんの約8割が自転車で来店します。
11月以降は、SNSなどで周知はしつつも、来店したお客さんに直接のアナウンスや確認などは行っていないということです。
確認を行わない理由について、居酒屋の店長は、「『自転車で帰らないで』と言えば、『じゃあもう来ない』となる人はいるはず。自転車での重大事故が起きていることはわかっているが、正直、物価高でギリギリ踏ん張っている中、お客さんの足が遠のく要因が増えるのは避けたい」と話しています。 NPO法人自転車活用推進研究会理事長の小林成基さんによると、
「客足が遠のく以前に、もし酒を飲んだ客が帰りに重大な自転車事故を起こしたら、店の責任も問われる。それで、店がつぶれることにもなりかねないので、自転車で帰る客には絶対に酒を提供しない、また店内で張り紙などして注意喚起するなど、積極的に飲酒運転をなくす努力を店側もするべき」ということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2024年12月18日放送分より)
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