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 SNSを中心に知名度を上げ、テレビや雑誌にも取り上げられた路上パフォーマーが話題だ。「褒めますおじさん」と名乗るその人物は、大きな声でとにかく人を褒めまくるパフォーマンスで人気を集めている。

【映像】全力で褒め倒す“褒めますおじさん”

 渋谷で出会った女性に「空の色を連想させるネイルの色と、お姉さんの笑顔が太陽という感じで…」といった調子で話しかけ、褒められた女性は「心が温かくなった」と返す。褒めるコツは「思ったことをすぐに言う」「質問を投げかけて、いいなと思ったことがあれば投げ返す」ことだそうだ。

 そんな褒めますおじさんは、決まった家がなく、ネットカフェやビジネスホテルを転々とするホームレスだ。「1日1日食えればいい感覚で、やりたいことをやってみよう」と、このパフォーマンスを選んだという。『ABEMA Prime』では、路上パフォーマーになったきっかけと、バズった要因を深掘りした。

■SNSでもバズり中「褒めますおじさん」って何者?

 「褒めますおじさん」は、活動開始から3年がたつ。2021年12月30日に路上デビュー(初日に約4000円を稼ぐ)、2日目で2万円越えの稼ぎになった。SNSで広まりを見せ、自身も発信活動を行うように。1日平均4000円程度を稼ぎ、47都道府県制覇を目指している(現在21カ所突破)。2024年9月には、ドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」に密着されたことでも話題になった。

 褒めますおじさんは、栃木県出身の43歳だ。2021年に15年務めた解体業を退職し、実家に戻った。しかし、ギャンブル癖により借金を抱え、その額は約600万円に。加えて、父親が病気となり住宅ローンが払えず、実家が差し押さえられた。追い詰められた2021年12月、一念発起して路上パフォーマンスをスタートする。

 褒めますおじさんが「すごくほめます」のプラカードを広げて、パフォーマンスを実演する。平石直之アナウンサーに対して、「めちゃくちゃいい男。六本木のイルミネーションより、平石アナを見ていた方がテンション上がる。品格のある姿、洋服も大人の渋みがある。褒めるところしかない。平石アナに会えて、きょうは本当にいい夢が見られそう」と、矢継ぎ早に褒めまくる。

 この様子を見て、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「頭の回転が速く、言語能力も高い。優秀な人なのではないか」と評価する。「日本中で、割といろんな人ができる。この仕事が広まるのはいいことではないか」。

 始めたきっかけは「ずっと路上パフォーマンスをやりたいと思っていたが、歌や楽器や大道芸はできなかった。今すぐ簡単にできるものが、褒めることだった。すべてを失った状態で、やりたいことをやろうと思った」と振り返る。

 いまではパフォーマンスに対する反響も大きい。「来てくれた人が撮って、TikTokなどのSNSに拡散してくれる」。一般的な仕事に戻ることは考えておらず、「これでやっていこうと考えている。収入は2000円から3万円など波があるが、今は月20万円前後が多い」と説明する。

 1回あたりのパフォーマンスは「疲れた時は2〜3時間、多い時は10時間ぐらい」で、稼ぎ時は「週末や忘年会シーズン、年始」だそうだ。“褒め芸”を始めてから、「いろんな人と出会えて、いろんな所へ行ける。やりたいことができて楽しい」という。

■路上でバケツをドラム代わりに叩きまくって人気者になったTKさん

 路上パフォーマンスをきっかけに、ホームレス生活から卒業した人物もいる。現在はSNSのコンサル会社を経営しているTKさん(31)は、2004年から吉本興業NSCジュニアに7年間通い、2016年に大学卒業後の語学留学のためシドニーへ渡った。

 しかし、留学中のトラブルで金が底をつき、ホームレスになり、路上パフォーマンスで生活することを決意した。その後は、海外を転々としたが、2020年にコロナ禍で帰国。YouTuberに転身し、SNS系ベンチャーを起業した。

 もともとTKさんは、ドラム未経験だった。「留学エージェントにだまされ、持っていた130万円が、500円になった。今日をしのぐパンを買うか、ドラムスティックを買って、ゴミ山のバケツをたたくか。せっかくなら路上でと、公園でやってみた」。パフォーマンスを始めてからの4年間で、「これで生活していたから、相当うまくなってしまった」という。

 AV女優で作家の紗倉まなは、2人から「『人を喜ばせたい』という気持ちの強さを感じた」として、「『自分を喜ばせたい』とは違って、純粋に持つことが難しい。なぜ、この気持ちを抱いたのか興味がある」と問う。「『人が喜んでくれる』という快感は、自信や存在価値につながる。その感覚は自分にもあるが、2人の熱量の高さは圧倒的だ」。

 こうした路上パフォーマンスから、プロパフォーマーや芸術が生まれていく可能性はあるか。TKさんは「レギュレーションを定めて、質や厚みを増せば、絶対に可能性はある。海外観光客もインバウンドで増えている。そこに注力すべきだ」。褒めますおじさんも、「ミュージシャンはプロになっている人がいる。歌以外でやれる人が出てくるといい」と願った。
(『ABEMA Prime』より)

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