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 息子は、寝たきりの92歳の母親から「楽にしてちょうだい」と殺害を依頼されたと述べました。

■2人きりの“介護生活”

母親の首をひもで締めて殺害した罪に問われている この記事の写真 前原英邦被告(61)
「今は…時間が戻るのであれば、あの時に戻って、母を殺さない方法があるんじゃないかと思う」

 おととしの8月、当時92歳の母親の首をひもで締めて殺害した罪に問われている前原英邦被告。母ひとり、子ひとりで暮らすなか、なぜ母親を手にかけるに至ったのか。

 12日に裁判員裁判で行われた被告人質問からは、徐々に追い詰められていく様子が克明に伝わります。

弁護側
「母にがんが見つかったのは?」 母親は足にまひが残り、寝たきりに 前原被告
「15年くらい前です。直腸がん、人工肛門(こうもん)になってしまいました。介護が必要になってしまいました。大きな病気が起きたのは2019年の脳梗塞(のうこうそく)です」

 母親は足にまひが残り、寝たきりに。それからの3年間、壮絶な介護生活が始まったと言います。

 前原被告は、弁護側からの質問に対して表情を崩さず淡々と答える一方で、「母親に対して何か言いたいことはないか」と問われると、言葉を詰まらせながら答えていた。

 1963年に生まれた前原被告。中学卒業後、調理師専門学校を経て料理の世界に入りました。26歳の頃には料理修行のためフランスにも渡りました。以降、フレンチのシェフとして働いていましたが、その仕事も2019年には辞めます。母の介護のためです。

介護の様子について語る 前原被告
「フルタイムで24時間対応するようになりました。パウチの管理、尿カテーテルの廃棄、たんの吸引、酸素の管理、あとは点滴の抜針。このほかにも、一般的に介護と言われることをやっていました」

 脳梗塞で倒れた母親は寝たきりになり、認知症の症状も認められました。

弁護側の質問 弁護側
「朝何時ごろに起きる?」 前原被告
「5時前です。母の朝食の用意です」 弁護側
「そのあとは?」 前原被告
「母の血糖値の測定をします」 弁護側
「そのあとは?」 前原被告
「朝食を食べさせます。45分から1時間くらいかかりました」

 訪問介護も来ていたものの、前原被告は朝5時前に起き、夜10時ごろに寝るまで、一日のほとんどを母親のために使っていたと言います。

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■被告主張「楽にしてと母が」

■被告主張「楽にしてと母が」

 暮らしを支えるものは、母親の年金のみ。ただ家賃や介護費、借金返済費用はその倍以上かかっていました。

兄について語る被告 弁護側
「お兄さんがいますね」 前原被告
「はい。11歳離れています」 弁護側
「相談した?」 前原被告
「入院費用や介護について相談しました」 弁護側
「反応は?」 兄に相談したが… 前原被告
「そういうことは母の弟、おじに相談したほうが良いと」 弁護側
「援助は?」 前原被告
「そういうことは一切なかった」 弁護側
「兄は何をしている?」 前原被告
「国家公務員です。財務省です」

 前原被告は事件の数日前、母親と会話を交わしたといいます。

前原被告
「普段は何も聞き取れなかったが、『苦しいから楽にしてちょうだい』というのは聞き取れた。最初、黙っていました。そうしたら『楽にしてちょうだい』『殺してちょうだい』と言われた」 弁護側
「お母さんに何か言いたいことは」 検察側は「殺人罪」弁護側は「同意殺人罪」と主張 前原被告
「すみません…。もし、あの時に戻れるのであれば、もう一度やり直せたらと思う。母と一緒に生活していき、あんな形で終わらせないようにしたいです」

 検察側は経済的困窮から事件を起こしたとし「殺人罪」が成立すると主張。

 一方、弁護側は母親から依頼されたため「殺人罪」ではなく「同意殺人罪」だとしています。

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