◆「一人の人間として扱われていない感じ」
11月中旬、刑務所の面会室。長身の男性受刑者(38)が刑務官に付き添われて現れた。アクリル板ごしに向き合う。 「一人の人間として扱われていない感じがしました」。国賠訴訟を起こした理由について、そう訴えた。受刑者に選挙権を認めるよう提訴した男性が服役している加古川刑務所=兵庫県加古川市で
男性は2018年4月、知人から金銭をだまし取った詐欺容疑で逮捕された。起訴され、東京拘置所に移送。判決前の2019年7月、参院選があり、不在者投票で1票を投じた。 だが、2カ月後の9月に、懲役7年の有罪判決に。すると一転、2021年10月の衆院選や同時に行われた最高裁裁判官の国民審査は投票できなくなった。「受刑者になった途端に選挙権が奪われた。罪を償っている人は、なぜ民主主義に参加できないのか」 公選法では「禁錮以上の刑」に処せられている人、つまり実刑判決が確定して服役している人や、仮釈放中の人の投票を禁じている。ただ、憲法改正の国民投票は認められている。◆投票できなかった男性は裁判を起こした
男性は2022年8月に長野刑務所で服役中、東京地裁に提訴。次回選挙で投票できることの確認を求めたほか、国会の立法不作為として3万円の国家賠償を請求した。現在は加古川刑務所(兵庫県)で服役している。 関西の有名私立大を卒業し、事件前は不動産業などを営んでいた。「政治に熱心だったわけではないが、選挙は行ける限り投票してきた」と振り返る。東京拘置所(資料写真)
提訴を知った父親からは、「犯罪者に選挙権はいらん」と突き放されたが、男性は「みんなそう思うんだろう。『受刑者だから』というバイアスがかかっている」と話す。 選挙権を求める声は男性だけではない。長野刑務所にいた際、回覧された新聞で提訴のニュースが駆け巡ると、受刑者たちから歓声が上がった。「がんばれよ」と励まされたという。◆「投票させてもらえたほうが、社会に責任が持てる」
「こちら特報部」は他の受刑者らにも取材した。 無期懲役判決を受けた男性は「投票させてもらえたほうが、社会に責任が持てる。なぜ認めてもらえないのか不思議でならない」と話す。現在は仮釈放中で一般社会で暮らし納税もするが、あくまで「仮」のため恩赦がない限り刑期は終わらず、生涯投票できない。西日本の刑務所で服役中の男性も、こちら特報部への手紙で「刑務官が余計な仕事をするのがめんどくさいんだろう。これは明確な憲法違反だ」と綴(つづ)った。
男性の訴えを棄却した、東京地方裁判所と東京高等裁判所(資料写真)
確かに、国民主権を宣言する現憲法で、受刑者を民主主義から排除する一文は見当たらない。15条で普通選挙を保障し、44条のただし書きで選挙人の資格について「人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入で差別してはならない」と定めている。 だが男性の訴訟で、昨年7月の東京地裁判決は「(受刑者の)社会参加が一定程度制限されることは当然に予定されている」として選挙権制限の違憲性を否定し、訴えを棄却。今年3月、東京高裁も棄却した。 最高裁に上告した男性は「なぜ受刑者に投票する権利がないのか。判決文にはその根本的な理由の説明がなく、根拠を知りたい」と話した。◆欧州諸国の多くで投票が認められているのは
受刑者に選挙権がない日本の現状は特殊なのか。 「欧州諸国の多くは(条件付きを含め)受刑者による投票を認めている」と話すのは、ドイツ憲法に詳しい関西学院大の小西葉子専任講師だ。受刑者に選挙権を与えないのは憲法に反する、と訴える吉田弁護士=東京都内で
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