2023年11月、北海道の足寄町で女性を殺害し山林に遺棄した罪に問われている男の3回目の裁判員裁判が12月11日に釧路地裁で開かれ、検察側は男に懲役22年を求刑しました。
足寄町の無職、志渡典吉被告(59)は2023年11月、知人でスナックを経営する延本真弓さん(66)の頭部をハンマーで複数回殴ったうえ首を絞めて殺害し山林に遺棄したとして、殺人や死体遺棄などの罪に問われています。
9日に釧路地裁で開かれた初公判で、「間違いありません」と起訴内容を認めた志渡被告。当時の状況について志渡被告は「延本さんに金や車を借りたいと申し出たものの、延本さんが怒ってハンマーを持ち出した。ハンマーを取り上げた後のことは覚えていない。殺すつもりはなかった」と話しました。
しかし10日の2回目の公判では態度が急変。志渡被告は検察側からの質問に対して「記憶にない」「よく覚えていない」と言葉を繰り返しました。
検察側が犯行後に志渡被告がラップを延本さんの顔に巻いたという供述を元に、当時の状況を志渡被告自らが再現した様子を撮影した写真を示して「こういう風に巻いたんですか?」と質問した時には「てめえの上司呼べや!」と声を荒らげた上、「まったく巻けない状態だった、ラップは巻けなかった」などと話し、ほかにも殺害方法や動機など事件の核心に迫るような質問について何度も「詳しくは覚えてない」と話しました。
また「犯行当日にパチンコに行っているがどういう気持ちだったか」という質問について志渡被告は「捜索はすでに始まっていて、ヘリコプターが飛んでいてヘリコプターの音が家にいると聞こえてきてパチンコ店に言った」と答え、検察側から「当日はヘリコプターは飛んでいません、パチンコ店に行ったときの気持ちは?」と再度同じ質問をした時には「(当時延本さんと同居していた)交際者に相談したいと思って行った」「実家から家を出るのが億劫になると思ってパチンコ店で時間をつぶそうと思った」などとかみ合わない証言もありました。
11日に開かれた志渡被告の3回目の公判で検察側は「残忍極まりなく被害者を確実に殺害しようとしていたことは明らかで、強固な殺意に基づく悪質な犯行である」として志渡被告に懲役22年を求刑しました。
一方で弁護側は「事件は偶発的犯行で計画性がない」などと情状酌量を求めました。
11日の公判では延本さんの長女と長男が参加し、長女は「こんな風に突然会えなくなるなら、もっとたくさん帰省して子どもたちに会わせていろんなところに連れて行ってたくさん思い出を作っておけばよかった。今すごく母に会いたいです」と語りました。
また長男は「供述調書と被告人質問とのギャップがありすぎます。誠実さのかけらもありません。突然『お母さんが亡くなりました』と骨を見せられても信じられるわけがありません。被告人は明確な殺意を持って母を殺しました、その報いを受けなければなりません」と2人とも涙ながらに悔しさを滲ませました。
このほか、志渡被告は延本さんの財布からクレジットカードなどを抜き出し、帯広市内のドラッグストアで薬などを購入していて、窃盗や詐欺などの罪にも問われています。
志渡被告の判決は、12月13日に言い渡される予定です。
■冒頭陳述
・犯行の事実関係に争いはなく、争点は量刑
犯行様態は悪質で動機も身勝手(検察側)
・公訴事実に争いはなく、刑の重さを決めるための裁判
被告人の話からでしか分からないことや他の証拠などから判断してほしい(弁護側)
■2人の関係性
・15年ほど前から志渡被告が延本さんが経営するスナックに通い始める、店を手伝うことも
・志渡被告は本州への出稼ぎで足寄町から離れるも2022年12月から実家に戻る、志渡被告は無職に
・志渡被告と延本さんら複数人で旅行に行ったことも
・7?8年前に志渡被告が延本さんに告白するも延本さんに交際する気はなかった
・事件当時延本さんには交際者がいて、交際者は延本さんの自宅で同居
・2023年5月ごろから志渡被告が金銭で困窮し延本さんのスナックに通わなくなる
■殺害について
・延本さんは夜型の生活のため昼は寝ていることが多い
・昼ごろに延本さんの自宅の無施錠の玄関から上がりこむ
・2階の寝室に向かう。理由について志渡被告は「車を借りるため」
・寝ている延本さんを起こす。「帯広のハローワークに行くのに車を貸してほしいと言った」
・やり取りの中で燃料代の話になる。志渡被告さ「本州に行くと言ったら(延本さんが)豹変してハンマーを持ってきた」と証言
・延本さんが枕元にあった護身用のハンマーを持って「嫌だ」と言った
・ハンマーが志渡被告の頭に当たる「『痛い、ごめんなさいは?』と言ったが真弓は謝らなかった」
・志渡被告が馬乗りになりハンマーを取り上げ延本さんをハンマーで殴ったり鼻や口を手で押さえたりする。ハンマーを延本さんが取り出した経緯、犯行の動機や殴った回数など事件の核心については「記憶にない」「よく覚えていない」と繰り返す
・延本さんの遺体は見つからず、捜索の結果延本さんの自宅から約35キロ離れた足寄町内の山林近くの氷が張った川の下から延本さんの左足の骨と爪が見つかったのみ
■被告人質問中の志渡被告の言動
・「覚えていない」「詳しくはわかりません」と繰り返す志渡被告に対して、検察側は供述調書に沿った質問をする
・「でっちあげじゃないの、検察は何やってるの」声を荒らげ裁判長に「落ち着いてください」と制止されるシーンも
・志渡被告が犯行後にラップを延本さんの顔に巻いたという当時の供述を元に、取り調べで志渡被告自らが再現した様子を撮影した写真を示して「こういう風に巻いたんですか?」と質問した時に「てめえの上司呼べや!」と声を荒らげ、「まったく巻けない状態でした、ラップは巻けなかった」と答える
・「警察が一刻も早く来ていればこうはならなかった、警察は何やっているんだ」と責任転嫁する場面も
■質問と噛み合わないやり取り(一部抜粋)
「(Q山林に遺体を放置するとどうなると思った?)後から行くつもりだった。時があれば交際者に相談して行こうと思っていた」
「(Q犯行当日にパチンコ店に行っているがどういう気持ちだった?)捜索は既に始まっていてヘリが飛んでいて、遺体が見つかったとか聞いたり、ヘリの音が家にいると聞こえてきてパチンコ店に行った」
「(Q当日はヘリは飛んでいません、当日パチンコ店に行った時の気持ちを聞いています)真弓の交際者、夜7時ごろ来るんですけど相談したいと思ってパチンコに行った。実家から家を出るのが億劫になると思ってパチンコ店で時間をつぶそうと思った」
■求刑
・検察側は「残忍極まりなく被害者を確実に殺害しようとしていたことは明らかで、強固な殺意に基づく悪質な犯行である」として懲役22年を求刑
・弁護側は「事件は偶発的犯行で計画性がない」などと情状酌量を求める
■判決
12月13日午後3時(予定)
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