日雇い労働者が集まる、大阪・西成の「あいりん総合センター」付近で、大阪地裁による路上生活者の強制退去が行われた。約8時間半かけて、路上生活者の所持品や、放置されていた家財道具が撤去された。
【映像】強制退去になった路上生活者の行き先(実際の映像)
近くの雑貨店主は「撤去するなら早くした方がいいと思っていた」といい、西成に来て30年の男性は「シェルターに入っている人間は入っている。入っていない人間は外で寝ている。若い子らはドヤ(簡易宿泊所)に寝かせている」と語る。
1970年開設のあいりん総合センターは、西成のシンボル的な存在だった。事業者と労働者をつなぐことを主な役目として、1970年開催の大阪万博に向けた建設ラッシュでは、建物前に現場へ向かうワンボックスカーの列が当たり前だった。しかし、景気低迷と労働者の処遇をめぐり、たびたび暴動も発生した。
そして大阪府は2019年、老朽化と耐震性の問題から閉鎖する。2024年度までに建て替え工事が終わる予定だったが、路上生活者が立ち退きを拒んだ。大阪府は提訴し、2024年5月に立ち退きを命じる最高裁判決が確定したため、今回の強制執行となった。
西成の住民は、どう見ているのか。元暴力団員で、現在は生活困窮者へのうどん無料提供を行うキンちゃんは、センター周辺の人と「接点はない」と明かす。「生活保護を受けていない人が多い。長い間いる人もいた。高架下で毛布にくるまっている人も多かった」。
同じく元暴力団員の阿久津さんは、関わりはなく「部類が違う」と言うも、“強制退去”は目撃していたといい、「住んでる人もいる。どこかに住むところを確保するならわかるが……」と語る。大阪府と大阪市は、強制退去執行の当日まで、移動先があることや、生活保護の支援について声かけをしていたという。
強制退去後、生活していた人々は、どう過ごしているのか。センター周辺の人々に声をかけても応じてもらえないなか、西成に来て30年のIさん(69)が取材に答えてくれた。「30人ぐらい隙間なく寝ていた。今のところ、寝泊まりはこの辺で」。退去された人は、シェルターに入るか、場所を変えて路上生活するかに分かれたという。
Iさんは強制退去について、「不法占拠しているから仕方ない。長いこと居させてくれた方だ。本当なら冬場の今ごろに死んでいた」と語る。失業後にセンターから土木工事の仕事をもらっていたが、不景気で仕事が減り、路上生活者になった。
「生活保護が嫌い」だというIさんは、その理由を「人が働いて大変な思いをした税金には抵抗がある」と語る。「できるところまでは自分でやりたい。みんな空き缶拾いや、古本探しをしている」。いまの悩みは「猫ちゃんに、いつまでエサをやれるか」だ。「収入は1日1000円から、多くて2000円。その90%を猫に使っている。なるようになる、仕方ない」。
大阪府の吉村洋文知事は、Xで「占有者に自主的退去を求め続け、最高裁判決確定後も半年がすぎました。福祉的措置は勿論とった上での執行です。誰かが責任をもってやらなければなりません」と理解を求めている。
元東京都知事で元厚労大臣でもある舛添要一氏は、「行政の立場に立っても難しい」との見解を示す。「『人様のお金では嫌だ』と生活保護を受けない、シェルターにも入らない人をどうするか。自由な国だが、ある程度の強制力がいる。生活の面倒を見る方も自由で、そのギャップを埋めるのは難しい」とした。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
・【映像】強制退去になった路上生活者の行き先(実際の映像)・【映像】逮捕された「Z李」メンバーら(実際の映像)・覚せい剤、海外逃亡…西成で無料うどんを提供する元極道の壮絶過去・八田容疑者の祖父が語る「被害者遺族と話し合うつもりはない」・元暴力団員がシャバ初日に食した“出所メシ”に密着「味が濃い」鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。