ことし7月、千葉県長生村の自宅で重い知的障害のある44歳の次男を殺害したとして78歳の父親が起訴された事件では、介護への悩みが動機とみられています。

家族は神奈川県立の障害者施設への入所を断られたことをきっかけに転居していて、その後、行政などからの支援を受けていなかったことが分かっていて、神奈川県は、学識経験者や支援に関わった自治体などからなる検証チームを立ち上げ、10日、中間報告書を発表しました。

それによりますと、県立の施設の対応について、次男の希望や生きづらさを理解しようとしなかったことや、家族に親身に寄り添う職員がいなかったなどと指摘しています。

また、入所を求められた際の機械的な対応が家族を追い詰め、将来に希望を持てなくしたほか、転居後の生活状況を確認していなかったと指摘しています。

また、神奈川県についても「施設入所を待つ人への対応に何ら関与しなかった」としています。

検証チームは、施設の支援状況や、千葉県への転居後の関係機関の対応などについてもさらに調べ、今年度内に最終報告書を取りまとめる方針です。

《中間報告書で明らかに》

県が設置した検証チームの中間報告書からは、施設への入所が断られる中で、精神科病院への入院やグループホームへの入居など、なんとかして次男の受け入れ先を見つけようとしても見つからず、追い詰められていく父親の状況が明らかになりました。

“そろそろ限界だ”

事件が起きる1年3か月前の去年4月、家族の相談支援にあたっていた事業所から、殺害された次男の短期入所を受け入れていた施設に対し、「父から『そろそろ限界だ、入所できる施設を探してほしい』と話があり、園の状況を確認したい」という連絡があったということです。

これに対し、園は「虐待など不適切な支援の改善中のため新規の入所は停止中であることを理由に入所を現在受けていない」と説明したということです。

翌月、父親から、施設に対して同様の話があり、家族の相談支援にあたっていた事業所が、ほかの県立の施設を含めて入所先を探したものの見つからなかったということです。

“田舎への転居 考えたい”

去年9月、父親は次男を短期入所させるために施設を訪れますが、この際、疲れてイライラした様子で、次男のほおをはたいたということです。

このとき、父親は施設に対し、母親の持病が悪化したため自身の負担が増えていることや、「ゆっくりできて、次男が荒れても大丈夫な場所である田舎への引っ越しを考えている」と明かし、この情報は関係機関の間で共有されました。

病院もグループホームも入れず

翌月、精神科病院への入院を希望したものの断られたほか、ことし2月にはグループホームに体験入居しますが、受け入れには至りませんでした。

千葉県に転居 事件に

ことしの5月30日に施設の短期利用が終了し、6月上旬に家族は千葉県長生村に転居したということです。

そのおよそ1か月後の7月4日、事件は起きました。

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