金曜コメンテーターの長嶋一茂さんは、股関節の激痛に悩まされ続け、2024年9月に人工股関節を入れる手術を受けました。
■長嶋一茂さん 股関節「我慢できない痛み」急激な悪化
長嶋一茂さんを襲った激痛の原因です。
こちらは、一茂さんのレントゲン写真です。
痛みがない左足は軟骨がありますが、痛みが出ていた右足は軟骨がない状態です。
軟骨がないせいで、大腿骨と骨盤の骨が直接ぶつかって痛みが起きていました。
「(動くたびに)骨と骨があたる音がしていた。9カ月間、我慢できない痛みが続いていた」
そして、症状は8月から9月の1カ月で、急激に悪化していきました。
8月に撮影したレントゲンでは、わずかに軟骨が残っていましたが、9月に撮影したレントゲンでは軟骨が完全に消えています。
急激な悪化の背景には、『寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)』という病気がありました。
大腿骨を支える骨盤側の骨のくぼみが小さいという特徴があり、狭い面積で大腿骨を支えるので、急激に軟骨がすり減ってしまうということです。
しかし“形成不全”という言葉とは裏腹に、ポジティブな面もあります。
くぼみが小さいので、大腿骨の動きを阻むものがなく、結果的に股関節の可動域が広くなります。
藤田医科大学ばんたね病院人工関節センター長で長嶋一茂さんの主治医でもある、金治有彦教授によると、「股関節の可動域が広いという意味で、スポーツ選手には有利な骨格と言われている。いわば『神様からのギフト』」ということです。
次のページは
■「大変な手術」一茂さん執刀医が解説!手術の舞台裏■「大変な手術」一茂さん執刀医が解説!手術の舞台裏
一茂さんが受けたのは、軟骨がなくなった股関節を、人工股関節に置き換えるという手術です。
<1>足の付け根の外側にメスを入れます。<2>電動のこぎりを使って、大腿骨の先端の骨頭(こっとう)を切除します。
<3>ボーンスクリューと呼ばれる特別な器具で、骨盤のくぼみを広げます。この時、周囲の神経を取り除くため、今後は痛みがなくなります。
<4>骨盤にチタン製カップをはめ込みます。
<5>大腿骨側に土台となるチタンの軸を埋め、ボールを装着します。
<6>最後にカップにボールをはめ込み、手術終了です。
一茂さんの手術は、トラブルの連続でした。
トラブル1つ目です。
大腿骨の骨頭を切除する際に、電動のこぎりがオーバーヒート。新品の刃が欠けました。理由は、一茂さんの骨が硬すぎたからです。
トラブル2つ目です。
大腿骨にチタンの軸を打ち込む時も、骨が硬すぎて、なかなか入りませんでした。
そして、トラブル3つ目です。
手術終盤、人工関節がはまりませんでした。
はまらなかった理由は、『過前捻(かぜんねん)』です。
過前捻とは、大腿骨が骨盤に対して後ろにあり、骨盤の根元が大きくねじれている状態のことです。
股関節を上から見た図です。
正常な股関節は大腿骨の角度が15度程度ですが、過前捻の股関節は、大腿骨が15度以上ねじれています。
手術時間です。
通常は40分程度で終わる手術ですが、一茂さんの手術は1時間6分かかりました。
「一茂さんは、筋肉が大きくて、骨がとても硬い。予想外のことも起こり、大変な手術だった」
■3日で退院 驚異的なスピード回復
金治教授の手術の特徴です。
切開する部分が小さく、手術からの回復が早いことが特徴です。
普通に歩けることと、階段を自力で上れることが退院の目安で、通常は10日から2週間で退院する人が多いそうです。
一茂さんの場合は、どうだったのでしょうか。
手術前、金治教授によると、一茂さんは、
「病室から、手術翌日のモーニングショーに生出演したい」と言い、
金治教授は、「やれるならどうぞ」と返答。
その後、一茂さんは、本当に出演しようとしていたのですが、看護師さんが必死に止めて出演は見送られました。
しかし手術後、一茂さんは、「出られたと思う」と言っていたそうです。
一茂さんは、驚異的な回復を見せます。
手術翌日の朝6時には、歩行器なしで歩き、手術の翌々日には、普通に歩いていました。
結局、一茂さんは3日で退院。
金治教授です。「3日で退院した人は初めて見た。とんでもないスピード」
次のページは
■潜在患者 約1500万人「変形性股関節症」なりやすい人の特徴■潜在患者 約1500万人「変形性股関節症」なりやすい人の特徴
股関節について、街の人からも悩みの声が上がっています。
43歳男性・事務職の方「30代半ばから、股関節が痛い。長距離を歩いたり、ずっと立っていたりすると、ひどい時はちぎれるような痛さ。社会人になり、20kg近く太ったことが原因か」 60代女性・主婦の方
「もともと腰痛持ちだったが、40代半ばから股関節に痛みも。ズボンをはく時に痛くて大変。股関節だけでなく、腰もひざも痛く、パートをやめることに」 股関節の痛みについて、日本股関節学会は、
『一般に年齢が上がれば、変形性股関節症などの発症リスクは上がると考えられる』としています。
痛みを引き起こす代表的な病気として、変形性股関節症というものがあります。
股関節の軟骨がすり減って、関節に炎症が起きる疾患で、悪化すれば股関節が変形してしまいます。
潜在的な患者は、約1500万人と推定されています。
どういった人が変形性股関節症になりやすいのでしょうか。
●激しいスポーツをしている人
股関節を大きく動かすので、軟骨が損傷しやすいです。
●重いものを持ち運ぶ作業をする人
25kg以上の重量を持ち上げる仕事の人は、発症率が3.6倍になります。
●長時間立ち仕事をする人
座って仕事をする人に比べ、発症率が2倍になります。
●肥満の人
股関節に、より大きな負荷がかかるため、標準体型の人と比べ発症率が2倍になります。
●遺伝
変形性股関節症患者の血縁者は、そうでない人に比べて発症率が高くなる、という報告もあります。
●40歳以上の女性
骨盤のくぼみが小さいと、経年劣化により骨盤が変形しやすいということです。
腰や太もも、ひざに痛みがあると、その原因が股関節ということもあるようです。
腰痛持ちの人が、40歳を過ぎて腰痛の原因を調べると、幼児期からの股関節の発達不全だったというケースもあります。
変形性股関節症のサインについて、藤田医科大学ばんたね病院の金治教授によると、「患者から、『階段の上り下りで痛み』『和式トイレにしゃがめなくなった』『靴下がはきにくい』『足の爪が切りにくい』『あぐらがかきにくい』などの声がよくあがる」ということです。
次のページは
■股関節の痛み 悪化を抑える方法 手術で改善も■股関節の痛み 悪化を抑える方法 手術で改善も
変形性股関節症になった場合の悪化を抑える方法です。
普段の生活では、<1>重いものを持ち運びする作業をできるだけ避ける。
<2>靴はかかとに弾力性のあるものを選ぶ。
<3>トイレは和式ではなく、洋式を選ぶ。
<4>歩くと痛みのある場合、杖やカートを使用。
<5>減量する。
などを行ってください。
変形性股関節症の悪化を抑えるストレッチです。
<1>床に座り、片脚はあぐらをかくように曲げて、もう片脚は横に伸ばします。<2>背筋をしっかり伸ばし、曲げた足に腹をつけるように上半身を前に倒します。
<1>から<2>を1回10秒間、10回程度繰り返しましょう。
悪化を抑える「健康ゆすり」です。
<1>足の裏がしっかり床につくように、椅子に座ります。<2>片足、もしくは両足のつま先を床につけたまま、かかとを小刻みに上下に揺らします。
手術が必要になった場合についてです。
まず、関節を温存する手術があります。
『骨切り術』というもので、寛骨臼形成不全の程度が強い場合、骨の形を整えます。
もう1つが、『股関節鏡視下手術』で、軟骨が損傷し、痛みが強い場合、内視鏡を挿入し、損傷した軟骨を修復します。
ワールドシリーズで左肩を脱臼した大谷翔平選手も、11月に左肩の関節鏡視下手術を受けました。
症状が重度の場合は、人工股関節の手術になります。
一茂さんが行った『人工股関節置換術』は、損傷した部分を切除し、人工股関節に置き換えます。
手術時間は40分程度です。
費用の一例ですが、40歳で年収700万の人が手術を受けたとすると、健康保険と高額療養費制度適用によって、10万円程度になります。
そこにベッド代や食事代などが加わります。
「過去に手術したゴルフ好きの60歳患者は、両足同時に人工股関節手術をしたが、3カ月後にゴルフを再開できたほど痛みがなくなった」ということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2024年12月6日放送分より)
・12月から「マイナ保険証」一本化 知っておきたい『4種のカード』違いと注意点・「下半身を露出」通報で“誤認逮捕” アリバイ訴えるも…「犯罪者扱い」に男性怒り・日本人に初「むち打ち刑」20回 強姦罪で判決 シンガポール…禁錮17年6カ月に加え・「カフェラテ」と「カフェオレ」何が違う?コーヒーと牛乳混ぜる割合…ではない!?・食券コピーした50歳県職員を処分 スタッフが気づいた“不自然さ”鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。