被爆者の立場から核兵器の廃絶などを訴え、ことしのノーベル平和賞を受賞する日本被団協の代表団は、日本時間の9日午前3時半ごろノルウェーのオスロ空港に到着しました。
空港で取材に応じた代表委員の田中煕巳さんは「私があいさつする立場になっているので非常に緊張していますが、今の核情勢が非常に厳しくなっており、今まで被爆者が訴えてきたことをさらに強く訴えて、その訴えを若い人たちに引き継いでいきたい」と話していました。
日本時間の10日午後9時から行われる授賞式には30人が出席し、3人の代表委員が登壇してメダルや賞状を受け取ったあと、田中煕巳さんが演説をします。
演説では13歳のときに長崎で被爆し、伯母や伯父など5人の親族を亡くした自身の体験などをもとに、核兵器の非人道性や被爆の実相を語ることにしています。
代表団は今月12日までオスロに滞在し、それぞれの被爆者が各国メディアの取材に応じたり、地元の学校で被爆体験を証言したりする予定で核の脅威が高まるなか、核兵器の廃絶などを世界に訴えることにしています。
代表委員の箕牧智之氏 田中重光氏は
オスロ空港で取材に応じた箕牧智之代表委員は「オスロに来ることができて大変光栄に思う。戦争、核兵器大嫌い、平和が一番。この3日間、一生懸命予定をこなしたい」と話していました。
また、田中重光代表委員は「ノーベル平和賞を受賞したということは亡くなった先人たち、すべての被爆者が受賞したことだと思っている。今は核兵器が1万2000発以上存在しており、2度と被爆者を作らないために頑張っていきたい」と話していました。
「高校生平和大使」も到着
ノルウェーで開かれる日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞の授賞式に出席する「高校生平和大使」が日本時間の8日、オスロ空港に到着しました。
核兵器廃絶を求める署名を国連に届ける活動を続けてきた「高校生平和大使」の代表で、高校2年生の4人は、10日、ノルウェーの首都オスロで開かれる日本被団協のノーベル平和賞の授賞式に出席します。
4人は、日本時間の8日午後7時ごろ、引率する元「高校生平和大使」の大学生などとともにオスロ空港に到着し、取材に応じました。
長崎県の被爆3世の大原悠佳さんは「『被爆体験者』や『在外被爆者』といった、いまも残る核兵器の問題を訴えていきたい。核兵器は1発使われただけで、一生、人々を苦しませることを伝えていきたい」と話していました。
同じく長崎県の被爆3世の津田凛さんは「被爆の歴史を過去のものと捉えられたらもうそこで終わりなので、後遺症があることや『被爆体験者』と呼ばれる被爆者と認められない方々がまだいることを伝えたい」と話していました。
広島県の被爆4世の甲斐なつきさんは「曾祖父と曾祖母の思いや経験をたくさんの人に伝えたい。現地の高校生や若者の価値観や思いを受け取り、これからの活動に生かしていきたい」と話していました。
熊本県の島津陽奈さんは「被爆地ではないところでも平和活動をしている若者がいることを伝えたい。平和や戦争、それに原爆に関するディスカッションを通して、現地の高校生の価値観を知り、日本でも生かしていきたい」と話していました。
4人は、10日の授賞式に出席するほか、今月12日までオスロで現地の若者と核問題について議論するイベントなどに参加する予定です。
被爆者や被爆2世などの一行も到着
日本被団協の代表団とは別に、長崎や広島などから現地を訪れる被爆者や被爆2世などの一行が日本時間の8日午後9時半ごろ、オスロ空港に到着しました。
一行は、授賞式の様子を現地のパブリックビューイングで見守るほか、市民やノルウェーの国会議員に被爆体験を証言する活動などを行うことにしています。
空港内で取材に応じた長崎の被爆者の三田村静子さんは「いまは戦争があるので、やはり戦争はだめだと、核兵器はだめだと世界の人に伝えたい。そして、手を取り合って、一生懸命頑張ろうと言いたい」と話していました。
代表団が宿泊するホテルのクリスマスツリーに折り鶴
日本被団協の代表団が宿泊するオスロ中心部のホテルでは、ロビーに毎年設置されるクリスマスツリーに、ことしは特別に折り鶴が飾られています。
高さおよそ3メートルのもみの木のクリスマスツリーには、滞在する被爆者たちを迎えようと、茶色やベージュの数百羽の折り鶴が松ぼっくりなどといっしょに装飾されていて、訪れた人たちを楽しませています。
このホテルによりますと、ノーベル平和賞を受賞する日本被団協に敬意を示すため、団体のシンボルマークである折り鶴を飾ることにしたということです。
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