よく、あらゆるジャンルで「日本一」の座が争われるが、なぜ情熱を注ぐ人がいるのか。ジャグリングパフォーマーで実業家の上野亜揮氏は「日本一高い山は富士山だが、2位は知らない」ことを、その答えとして語る。
【映像】傘回しの日本記録、達成の瞬間
日本記録の認定団体も経営している上野氏は、「ニッチなジャンルでも、“自己肯定感”につながる」と語る。そこで『ABEMA Prime』では、日本一になる難易度や、その効果について、上野氏らと考えた。
■日本記録の認定団体、公式ライセンスって何?
上野氏が代表を務める「UA日本記録」は、様々な「日本一」を認定する公式機関だ。申請後、認定員や各分野の専門家が厳正に審査し、公式ライセンスを発行する(※他の人が挑戦できない狭すぎる記録はNG)。費用は個人5万円、法人20万円で、相談・申請は無料になっている。
ジャグリングで日本一になった経験がある上野氏は、“日本一”の価値について、「法人は認知度=売り上げ、自治体ならば地域活性化につながる」と語る。UA日本記録の審査では「日本一と言いつつ、もし違えば詐欺に近い。あらゆる競合優位を調べる」という。
「埼玉県に住む○○さんがやる」といった狭すぎる記録は対象にならないが、ニッチな記録も認定されている。「『まばたきが速い』といった特技があり、日本一になりたい人が、好きで挑戦する」。
一方で、類似の認定団体もあり、「問題視している」そうだ。「“ジャグリングの日本大会”のように、業界内の日本一が決まるジャンルには関与すべきでない。超ニッチな分野をデータで出せることが認定団体の存在意義だ。きちんと調査せず、“日本一”と言う会社もある。個人で楽しむのはいいが、消費者をだまそうとする会社はどうなのか」。
■日本一になった人の実感は
UA日本記録が認定した“日本一”は、「1分間で後ろとびを跳んだ回数:219回」「和紙アートの大きさ:16.887平方メートル」「焼き和菓子の薄さ:1.1ミリメートル」「10秒間で片手腕立て伏せをした回数:12回」「数珠回しに使用された数珠の長さ:108メートル」「1分間に片手で指パッチンを行った回数:298回」など、王道からニッチまで多岐にわたる。
傘回し歴10年の杉山翼さん(31)は、パフォーマーとして全国の舞台で活躍している。2022年に「傘の上でボールを回した時間」2時間28秒で日本一に認定された。認知度・信頼度アップで仕事の依頼が20倍になり、自己肯定感の向上で、自信や誇りにもつながったという。
傘回師を志したきっかけは、「テレビで見て、本当に面白く、自分でもやってみたいと思った」と振り返る。「実際にやってみたら、1カ月くらい何も回せず、そこからは独学で学んだ」。
人はなぜ「No.1」にひかれるのか。心理学的には、目立つ特徴が対象の印象や評価に影響を与える「ハロー効果」や、特定の人物や団体が持つ権威に強く影響され、深く考えずに信用してしまう「権威バイアス」が考えられる。
■ニッチな日本一でも価値がある理由とは
上野氏は団体運営において、「『自分はこれができる』と自己肯定感を高めるところに重きを置いている」と語る。
作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、SMAPの『世界に一つだけの花』を引き合いに出しつつ、「2000年代にはNo.1にも、オンリーワンにもなれない人が大勢出て、自己承認欲求が高まった」と説明する。
そして、「どう承認欲求を満たすかが大きな課題になっている時代に、ニッチな分野でNo.1になることは、一つの生き抜く支えになる」と考察する。「“お笑いのNo.1”は頂上が高いが、もっと低いNo.1は実は多いと知ることで、承認欲求が満たされる。小さな領域のNo.1で、十分充足できる時代に変わってきている」。
(『ABEMA Prime』より)
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