固体燃料式の小型ロケットとして開発が進む「イプシロンS」。鹿児島・種子島で2024年11月に行われた第2段エンジン燃焼試験で爆発が発生した。原因調査を進めるJAXAは会見で、予定されていた2024年度中の打ち上げの見込みが立たなくなったことを明らかにした。
エンジン燃焼試験中に爆発…けが人なし
種子島宇宙センターでイプシロンS第2段エンジンの地上燃焼試験が行われたのは2024年11月26日朝。点火から49秒後に爆発し、火災が発生した。
この記事の画像(10枚)映像には真っ赤な炎と白い煙、それに何かが飛び散る様子がはっきりと記録されている。爆発に伴う人的被害はなかったが、設備の一部が損傷した。
当日の夕方、イプシロンロケットプロジェクトチーム・井元隆行プロジェクトマネージャが現地で会見し「爆発した時点でエンジン内部の圧力が想定より高くなっていた」と説明した。
JAXAはその日のうちに調査チームを設置。H3ロケットの開発責任者を経て現在、宇宙輸送技術部門長の岡田匡史理事がトップを務め、事故原因の調査にあたっている。
12月5日に井元氏と岡田氏が会見を行い、井元氏は事故の発生状況について、エンジン点火から約20秒で燃焼圧力が予測値より上昇し、その後、圧力が下がって爆発したことを明らかにした。「燃焼ガスが爆発の前に漏えいしているのではないかと、推定しております」と説明している。
2024年度中の打ち上げ見込み立たず
イプシロンは、低コストでの打ち上げで宇宙ビジネスの国際的競争力を高めようと開発された固体燃料式ロケット。
2022年のイプシロン6号機打ち上げ失敗を受け、開発が進められているのが全長27メートルの改良型「イプシロンS」だ。第1段エンジンには「SRB-3」と呼ばれるH3ロケット用の固体補助ロケットが活用されている。
今回爆発した第2段エンジンは2023年7月、秋田県で行われた燃焼試験でも爆発事故を起こしていた。イグブースタと呼ばれる着火装置の一部が溶けて断熱材を破損したことで、エンジン内部が高温になり爆発につながった。今回の燃焼試験は着火装置に断熱材を巻くなどの対策をして臨んだが、またも失敗に終わってしまった。
調査チームの岡田氏は5日の会見で「年度内の打ち上げの見込みは立たなくなった。現実的には不可能だと認識している」と述べ、2024年度中に予定していたイプシロンSの打ち上げは困難、との見方を明らかにした。
JAXAは引き続き試験データや回収した部品などの分析と、設計や製造、検査データの確認を行い、燃焼圧力が予測値から大きく離れ、燃焼異常に至った原因を調査するとしている。
新型のH3ロケットが初号機の失敗を乗り越え成功を重ねる中、開発が難航するイプシロンS。打ち上げに成功し鹿児島、そして日本の宇宙ファンに夢と感動を与えてくれる日が待たれる。
(鹿児島テレビ)
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