今は生活にすっかり浸透したSNSだが、世界では規制の動きが進んでいる。アメリカ・フロリダ州では14歳未満のアカウント取得が禁止、フランスでも15歳未満はアカウント作成に保護者の同意が義務付けられている。そして先月、オーストラリアでは16歳未満の利用を禁止する法案が可決。国レベルでの禁止は世界初となった。企業側に利用できないように措置を求め、子や保護者に罰則はなく、プラットフォーム側の企業に対して最大約50億円の罰金を課すということでも話題になった。
【映像】子どもに悪影響?SNSの弊害と言われているもの
日本でもパパ活や闇バイトなどの犯罪の温床になることもあり、いじめや誹謗中傷についても以前から問題視されている。また偽情報、フェイクニュース、社会の分断も指摘され、最近では選挙におけるSNSの影響力が既存のメディアを超えたという声も出た。『ABEMA Prime』ではデジタル大臣としてSNS対策にも取り組んできた衆議院議員・河野太郎氏を招き、日本におけるSNSの現状と、今後の対策について議論した。
■各国でSNS年齢制限加速 日本では?
オーストラリアでは16歳未満のSNS利用を禁止する法案が可決された。前デジタル大臣の河野太郎衆議院議員は「16歳未満の利用を禁止するというのも、かなり画期的だ。プラットフォーマーにその責任を負わせているというのがすごく大事だ。要するに『やってはいけないことができないようにするのは、あなたがたの責任よ』ということをはっきりした」と述べた。
さらに、「例えば16歳未満に使わせないとか、誹謗中傷している者を放ったらかしにしてはダメとか、何をやってはいけないというのを決めて、それを『あなた方の責任でちゃんと実行するのよ』というところがすごく大事。年齢をどこで切るのかは議論の余地がある。日本もある一定年齢以下でアカウントを作ってはいけないというのはやった方がいいのではないか」、と日本におけるSNSの年齢制限に前向きな意見を出した。
今回、法案が可決した点には「オーストラリアの人と話をしたら『これはやったのだけど、どうやって年齢制限をするんだ』みたいな話をしていたので、『おいおい、それを決めずにやったの?』というところはある」と、年齢確認については見切り発車な部分もあると指摘。「日本ならどうするの?と言われたが、日本ならマイナンバーカードがある。年齢認証をすれば、日本は割と簡単にできそう」とも述べた。マイナンバーカードを用いることで、SNSが使われる特徴の一つでもある匿名性が失われるのではという問いには「そこは別に議論がある。マイナンバーカードで年齢の認証はするが、それで匿名でやるというのもアリ」。匿名アカウントが誹謗中傷を促進するリスクについては「匿名でやると誹謗中傷は極めてしやすい。実際に名前を出してやっているところと、匿名でやっているところで、多少ルールに差があってもいいのではないのか」とSNSごとのルール決めには幅をもたせるべきとした。
では、日本で具体的にSNS規制年齢を決めるなら、どこでラインを引くべきか。「たぶん中学生で切るとか、高校生で切る。今18歳で投票ができるが、同じ高校3年生でも誕生日によって僕は投票できる、僕はできないみたいなこともある。中学生はダメとか、小学生はダメとかで区切るべき」と学年で区切るべきとの見解を示した。
■求められるプラットフォームの責任と管理
年齢制限は子どもたちを守るものではあるが、同時に大人も含めて闇バイトや誹謗中傷対策は、年齢を問わずつきまとう。河野氏は「年齢で切るだけではなく、誹謗中傷はダメとか闇バイトの募集を止めろよとか、何を辞めさせなくてはいけないのかという議論はある。明らかにXは、TwitterからXに変わって、その辺がいい加減になった気がする。だからもう一回そこはちゃんとコストをかけてでもやってくれと思う」と述べた。
河野氏は自身もXのアカウントで発信、時折「ブロック」についてやり取りされることもある。「要するに大事なのは、誹謗中傷がいっぱいあると、見にきた人が嫌になってしまうこと。書いた人のものを見るのは見ればいい。ただし、その人が手を出せないようにするというのが大事だ。その人が間違ったことを思っていても、ちゃんとしたことが書いてあったら、そうだったんだと気づくチャンスがあるという意味では見えた方がいい」と私見を語った。
また昨今、SNSではアルゴリズムが発達し、偏った意見などを見続ける傾向が強まった。同時に、見せたくないコンテンツにフィルタをかける方がいいという意見もある。「プラットフォーマーに規制をかける最後の究極は、ある程度アルゴリズムに制約をかけろよと言わないといけない。エコーチェンバーみたいなもので、どんどんドツボにハマっていく人が増えているのを見ると、やはりアルゴリズムでどこまでやってもいいのかという議論も最後にやった上で、プラットフォーマーもアルゴリズムも規制の対象になるみたいなことをやらないといけない」と、同種のコンテンツばかりを見続ける傾向に懸念を示した。
打開策としては発達し続けているAIの活用を挙げた。「中学生ぐらいの年齢だったら、こういうコンテンツはダメというようなことが、本当にAIでできるたらいい。ただしAIの精度がどこまで上がっているのかというのと、もしそれをスリップして出てきてしまった時に、罰則の対象になるのか。1万回見ていて、1個出てきただけでもダメなのかという、そこの線引きがちょっと難しい」と、実用段階での課題も指摘した。
■個人レベルで誹謗中傷などのトラブルはどう回避するか
プラットフォーム側で規制を強めることはできるが、個人による誹謗中傷の対策には、どこまでいっても限界もある。近年では国内でも、積極的に開示請求をする人が増え、河野氏自身も行っている一人だ。実際に開示請求を行って、誹謗中傷が減った手応えはあるのか。「まだ、自分は(中傷しても)大丈夫と思っている人がいる。そこはある面、どこまで金をかけて、手間暇をかけてやるか」。弁護士に依頼し、開示請求を行ったとして、最終的に被害者側にプラスにならないケースも多く「ちゃんと賠償金額がもらえるというのが大事。少なくとも開示請求と裁判の費用ぐらいはちゃんと取る」仕組みが必要だとした。
10代など若い人が、開示請求までたどり着くのも簡単なことではない。そのためにも河野氏はブロック機能の活用を推奨する。「僕はどんどんやった方がいいと思っている。ブロックしているのがいけないというのは違う。そもそも誹謗中傷している人がいるのだから、ブロックしているのは当然だ。誰だって、気持ち悪いことを見るのを強制される必要はない」。
■選挙も揺るがすSNS
最近では日本で次々に大きな選挙が行われ、アメリカでも大統領選があった。ここでもSNSが大きな存在感を示した。河野氏は、選挙を利用した“金儲け”を警戒した。「選挙を利用して、SNSやらYouTubeやらで再生数を稼いで金儲けをしている部分もある。そこはケースバイケースで分けないといけない。本当は選挙絡みで課金するのはダメだが、どこまでが選挙絡みなのかがなかなか分からない。総選挙をやっている時は一切課金しない、市議会議員選挙をやっている時は他市から発信したら網にかからないというのもある。線引きは非常に難しい」という。
ただし選挙での金稼ぎが選挙に与える影響は無視できない。「選挙の質が悪くなるというか、選挙は何のためにやっているのかというのもある。大きな選挙を金儲けで情報発信をしていると、選挙に関係している情報以上に関係ない情報が多かったら、正しい情報にたどり着けなくなる」。SNS同じ思想を持っている人が集まり、デマを作り合うこともある。異なる思想を持った人は衝突もしやすい。「アメリカは今、完全にそうなっている。ヨーロッパでもそういうところが出てきている。結局、原因はSNS。SNSのエコーチェンバーみたいなものがどんどん行ってしまっている」。
(『ABEMA Prime』より)
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