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 ネット上では、よく「書いて覚える」ことが論争になる。一定の効果があるとする教育者がいる反面、アメリカで医師として働く安川康介氏は「書き写すのはあまり効果がない。ハイライトや下線を引く勉強法は、他の学習法に比べて効果が低い」と指摘する。

【映像】効果が薄いと言われる勉強法3つ

 安川氏は、大学在学中、決して勉強漬けではなかったが、「アクティブリコール」と呼ばれる記憶術を使ったことで、日米の医師国家試験にダブル合格した。一方で近年では、知識量より応用力を問うために、スマートフォンなどを持ち込み可能とする試験もある。『ABEMA Prime』では、安川氏とAI時代に人間が記憶することの意味を考えた。

■「書き写して覚える」「何度も読む」のは意味がない?

 安川氏は「黒板や教科書の文章を書き写すことは、効果がゼロではないが低い。情報を記憶や理解せずともでき、脳に負荷がかかっていないため、学習効果は低いと言われている」と説明する。「ただ、黙読より、つぶやいたり書き出したりした方が、記憶の定着はいい」。

 何度も繰り返し読む勉強法については、「論文をまとめた2013年の報告書によると、科学的根拠に基づいて、有用性が低いと結論づけられている。何回も読むと、文章に慣れて、深く理解していないのに、知った気になってしまう」と説明する。

 ハイライトや下線を引くのはどうか。「強調する場所を選ぶのが、うまい人とうまくない人で差が生まれる。『下線を引いた部分を見直して、いざ試験を受けたら、推論問題で点数が低かった』という報告もある。線の部分にフォーカスしすぎるのは、逆に良くない」。

■ポイントはヒント無しで思い出すこと!「アクティブリコール」とは

 安川氏によると、勉強したことや覚えたいことを能動的に思い出す勉強法「アクティブリコール」は、科学的に効果があるという。行っているアクティブリコールは「白紙勉強法」というもので、教科書などの覚えたい情報を読み、その情報を見ないで、覚えたい内容を白い紙に書き出すといった方法をとる。

 アクティブリコールは「がんばって記憶から引き出す作業」を指し、白紙勉強法だけでなく「過去問や練習問題を解く、暗記カードを使う、他の人に教えてみる。本が開けない満員電車で『何を勉強したか』と思い出すだけでも成り立つ」という。「100年以上の歴史で、非常に効果が高い勉強法だと言われている」。

 そのうち白紙勉強法は、「教科書でも本でも、漫才のネタでもいいが、読んだ後に、その情報を見ないで書き出す」ものだ。「やってみるとわかるが、悲しいぐらい思い出せない。『読んだばかりなのに』と楽しくなくなるが、そこで元の情報に戻り、脳にフィードバックする」。その繰り返しで「満足いくアウトプット」ができれば、ひと段落となる。また「誰かに教えると理解が深まることも、心理学的に効果が高い勉強法として知られている」という。

 もうひとつ、重要なのが“分散学習”だ。「間隔を空けて勉強する。同じ時間数でも、分けて勉強した方が、学習効果が高いと実証されている。アクティブリコールを、間隔を空けて繰り返す勉強法が、学習の王道ではないか」。

■AI隆盛でも必要な人間の記憶・知識

 近年では、知識より思考力を測る入試も増えているが、安川氏は「記憶は学習の基本で、記憶しなければ、応用も想像もできない。いつの時代も新しい情報の記憶は軽視できない」と重要性を語る。

 知識を補う技術も進歩しつつあるが、「AIを使いこなせる人は、自分の脳に知識を内在化させている人だ。ネット時代で玉石混交の情報があふれるなか、どれが正確なのか見極めるためにも、勉強して、知識を持っておくことは大切だ」と指摘する。

 記憶と理解は密接に結びついているという。「何も理解せずに記憶するのは難しい。なんでもかんでも記憶しなければいけないとは思わないが、情報を頭の中に持ち、好奇心を持って新しいことを学び続けられる人は、いつの時代でも強い」。
(『ABEMA Prime』より)

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