マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」への移行に向け、2日、従来の健康保険証の新規発行が停止された。健康保険証が必要な人には、代わりに「資格確認書」が発行される。佐賀県内でも徐々にマイナ保険証の利用率は上がってきているが、県保険医協会の調査では、今年5月以降も医療機関でのトラブル・不具合が起きているという。

 同協会が全国調査の県内分をまとめ、11月27日に発表した。歯科を含め開業医の会員629件にアンケートを送り、146件の回答があった。

 5月以降のトラブルがあったとの回答が100件あり、昨冬に実施した同様の調査と比べ増加傾向だ。このうち半数以上は「●が出る」「資格情報が無効」「カードリーダーの接続不良・認証エラー」(複数回答可)で、多くは患者持参の健康保険証で対応したが、コールセンターやメーカーに相談したとの回答も計25件あった。

 健康保険証の廃止に賛成は9件で、延期すべきが11件、保険証は残すべきが117件だった。

 協会会長で中山利浩・中山内科クリニック院長は「マイナ保険証を使えば投薬歴などが確認できるというが、1カ月以上のタイムラグがある。医者が知りたいのは前日など直近の内容で、リアルタイムでないと意味が無い。カルテが見られるわけでもなく、紹介状は必要。医療のDX化は大切だが、会員の中には厚生労働省が示すマイナ保険証のメリットは『誇大広告』との声すらある」と話す。

 調査結果を受け、県内市町に、マイナ保険証があっても健康保険証を持って受診するよう住民に勧めることや、マイナ保険証の保有者も含め全ての被保険者に資格確認書をプッシュ型で送ることなどを求める要請書を送った。現行の健康保険証を今後も併用できるよう国に存続を要望して欲しい、とも記した。

 厚労省によると、10月末で全国で7747万人と、全人口の6割程度がマイナ保険証を保有しているが、医療機関・薬局での利用率は15.67%にとどまる。

 県内の利用率は17.39%で、全国より1.72ポイント高い。ただ、都道府県ごとの施設別では病院26.43%(全国34位)▽医科診療所11.39%(同42位)▽歯科診療所22.15%(同29位)と低く、23.54%と同2位の高さの薬局が全体を押し上げている。

 国民健康保険の事務を担う各市町も対応を進めている。

 2日以降、マイナ保険証がない人は、現行の健康保険証の有効期限が切れたら、代わりに「資格確認書」が発行される。手続きをしなくても期限に合わせ送られてくる。転居や転職で健保の加入先が切り替わる、紛失などで再発行が必要といった場合も、資格確認書が発行される。

 企業健保など有効期限がないものもあるが、国保などの保険証は有効期限1年が通例。県内全市町の国保と後期高齢者医療制度の現行の保険証は、有効期限が来年7月末までとなっている。

 県によると、有効期限は各市町で独自に設定していたが、今回を機に統一することに。佐賀市は従来3月末までだった有効期限を、今年4月以降は一律で来年7月末までにしたという。

 市の担当者は「窓口や市報で周知を進めており、特に混乱もなく、通常通りの態勢で対応できている」と話す。ただ、2日以降は現行の保険証が使えないと勘違いしている人も少なくないといい、「更に周知したい」。

 一方、マイナカードと健康保険証の連携を解除することも可能になった。全国で10月28日から順次始まり、佐賀市では11月7日から受け付けを始めた。市によると、使用時に時間がかかった、情報流出が心配、といった理由で、2日までに十数件の解除申請があったという。

 マイナ保険証を持っている人には一部の例外を除き資格確認書が発行されないため、今後は資格確認書を求めての解除申請が出てくる可能性もある。

 マイナ保険証によるオンライン資格確認での5月以降の主なトラブル事例(佐賀県保険医協会の調査から)

・双子の名前が入れ違っていた

・国保の有効期限がリンクされておらず、保険証で確認した

・家族で1人だけ資格無効の状態が数カ月も続いている

・名前が●になっているので、再来の人も新患扱いになる

・自衛隊員の保険証は使えるのに毎回資格無効になる

・患者の医療費負担割合が保険証と異なる

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