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 日本一周を目指して、キャンピングカーで旅をしていたYouTuber「sunny journey(サニージャーニー)」のこうへいさんとみずきさん夫婦は、2年前のとある動画で有名になった。みずきさんがすい腺房細胞がんと診断され、余命は「長くて2年」と宣告されたのだ。2人は治療費をクラウドファンディングで集めようとしたが、その賛否がSNSで大論争になり、動画の再生数は400万回超え。こうへいさんは当時、「目の前にある方法はすべて試したかった」と語っていた。

【映像】2年前の“がん公表”時の2人

 それからの2年間、チャンネルでは治療の様子を多く発信してきた。しかし、クラファンに端を発した誹謗中傷は絶えず、こうへいさんによると、「病気はうそだ」の声が多く、殺害予告も。クラファンを断念し、クリエイター支援のプラットフォームに移行するも、これまた「収支を報告しろ」などと批判の的になった。

 ネットでお金を募るのは悪いことなのか。『ABEMA Prime』で、改めて2人とともに考えた。

■“クラファン騒動”、それから2年間の過ごし方

 こうへいさんはクラファンを選んだ理由について、「すい臓がんのステージ4は治療が絶望的。結果的には標準治療だったが、当時は自由診療も考えていた。目の前が真っ暗になり、数百万円以上する治療にもすがりたかったが、経済状況として難しく、『助けてくれる人がいれば』と始めた」と説明する。

 2人には否定的な意見が寄せられた。「病気を売りにしてお金稼ぎをしてる」「病気だったら何を言っても許される訳じゃない」「本気で心配して寄付した人の気持ちを考えろ」「人のお金だけを当てにして普段は遊んで、本当に苦しんでいる人に失礼」「医療費をクラファンする意味がわからない」「他人のお金をあてにせずに働いて医療費を捻出しろ」といった反応だ。

 こうへいさん自身は「クラファンをやりたかった」そうだが、みずきさんを尊重し中止を決めた。「バズったことで、攻撃的な声がたくさん届いた。みずきが『クラファンで使途の内訳を出すと、生活を監視されているようになるのでは』と、それでは幸せにならないと思った」。

 その後、抗がん剤の治療を開始。「はじめは体調が悪かったが、抗がん剤が効いて手術ができるとなってからは、先が見えてきた。手術、その後にまた抗がん剤という闘病中心の生活になったが、合間にヨーロッパ旅行に行かせてもらうなど楽しく過ごすこともできた」と振り返る。

 公表当初はYouTubeでの収入が大きかったものの、「みずきが良くなるにつれて収入は下がり、だいぶ厳しい時期が来た」という。現在は、「TikTokライブも始めて、YouTubeと合わせて収入を得ている」と明かした。

■なぜ炎上?田端信太郎「唯一の正当な批判は“初動”だと思う」

 アクティビスト個人投資家の田端信太郎氏は「一般論として、標準治療に高額を上乗せしても、さほど延命や治癒の可能性が高まるわけではないという認識だ」とした上で、「日本では標準治療でそこそこ十分に受けられるが、なぜプラスアルファを集めようとしているのかと思わせてしまった。唯一の正当な批判としては、その“初動”だと思う」と、炎上への見方を示す。

 こうへいさんは、「恥ずかしい話、知識がなかったのはそのとおり。ただ、ネットで調べると、自由診療に誘導するサイトが多かった。YouTubeで公表したことで、あちこちから『話を聞かないか』という連絡も来た」と、自由診療に期待した経緯を説明。

 がんを証明しようとしたこともある。「医師の名前と印鑑を伏せた診断書を出したら、『偽物だ』と笑われた。次の手段として、主治医の正式な書類のもと、現役がん医のYouTuberに“公開セカンドオピニオン”をしてもらい、ウソをついてないと訴えた」。

 寄せられる声は応援が多いが、目立つのは一部の過激な人だ。「僕らが本を出した時は、出版社に『あんな悪いヤツらの本を出すな』と電話があった。YouTubeのコラボ相手にも攻撃してくる」と明かす。

 2人の炎上について、ネットメディアと経済が専門の国際大学GLOCOM山口真一准教授は、「極端で強い否定的な思いを持っている人ほど何度も投稿する。その結果、誹謗中傷コメントが増える」「断片的情報が拡散されやすいため、誤情報をもととした中傷が広まる。誤情報は事実の6倍のスピードで拡散するという研究もある」としている。

■「OFUSE」にサービス変更も「叩かれ続ける」

 クラファンを断念した後、クリエイター支援のプラットフォーム「OFUSE(オフセ)」を使い始めた。「最初のYouTube動画にすごい投げ銭が飛んだが、事務所みたいなものに入っていたこともあり、5割近く無くなってしまう状況だった。対してOFUSEは9割入ってくるので、せっかく僕らに届けていただけるならと移動した」と経緯を説明。

 「OFUSE」の条件として、「寄付ではなくクリエイター支援」「いただいた支援はみずきの幸せのためなら何にでも使います」「少しでも疑念を感じる方は寄付をご遠慮ください」と明言。用途は治療やヨーロッパ旅行、フォトウェディングなどで、これまで1名のみ返金要請があり、対応したという。

 みずきさんは、「最初にクラファンを検討した時、『食事にいくら』『外出にいくら』と事細かに説明して、もし『ぜいたくだな』と言われてしまうと、楽しく過ごせなくなってしまうと感じた。こうへい君が、私自身が活動しやすいようにこういう言葉を添えさせていただいた」とコメント。

 しかし結局、OFUSEの利用もやめたそうだ。こうへいさんは「叩かれ続けた。YouTubeの投げ銭と同じ“クリエイター支援”だと言っても、『収支報告を出せ』と言われる。一番叩ける部分がそこなのだろう。悪いことを正したいというより、叩くことが楽しい人たちが叩く理由を探している状態だ」と嘆く。

 田端氏は「炎上コンサル風に言えば、最初のクラファンをやめないほうがよかった。『こいつら効いてるぜ』と思うから叩くわけで、ノーダメージだと判断した瞬間に他へ行く」と指摘した。

■がん再発を公表 今後の目標は「日本一周を最後までやり遂げたい」

 2人は3日公開の動画でがんの再発を公表した。「自覚症状はなく、元気。原発はすい臓がんで、鎖骨のリンパに転移したが、そこが大きくなったことが数日前にわかった。おそらくまた抗がん剤と手術になるだろう」。

 そんな中、今後の目標について、「日本一周を最後までやり遂げたい。病気が発覚したのは、日本一周の途中だった。視聴者にも『最後までやったよ』と共感してほしいので、途切れ途切れになっているが、やりきりたい」と語る。

 こうへいさんも「ここまで来たら、なんとか最後まで」と背中を押す。「YouTubeは割に合わないとやめようとした時期もあったが、『応援してくれた人に日本一周の旅を届けたい』というみずきの思いを大切にしたい」。(『ABEMA Prime』より)

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