『三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2024」』の選考会が12月3日、都内で開催された。大賞には、漠然と抱いた意識や思考を正確に言葉にして表すことを示す「言語化」が選ばれた。

辞書 “界隈” の人が選んだ新しくない新語

年末恒例の新語・流行語の発表。複数の団体が、独自の切り口でランキングしているが、三省堂は単純なヒットや人気とは一線を画し、「辞書に収録するにふさわしい後世まで残る言葉」を選定するのが特長。

2020年「ぴえん」、21年「チルい」、22年「タイパ」― コロナ禍の3年間はSNSなどインターネット上で自然発生的に生まれ、拡散しつつあった言葉が大賞となった。23年は国連のグテーレス事務総長がその年の7月に発した「地球沸騰化」。

今年選ばれた「言語化」は“新語感” が乏しい印象だが、実は、辞書には収載されていない言葉だという。「名詞+化」で作る言葉はあまりにも多数存在するうえ、元々は、「概念を言語化する」「心理的な要素を言語化する」など学術的な表現として使われることがほとんどで、新聞記事や日常会話の中で使われることはまれだった。

ところが、2010年代頃からじわじわと「言うに言われぬモヤモヤした思いをうまく言葉で表現する」という意味で使われるようになり、2020年代になり急激に使用頻度が上がっているという。

それを象徴するのが、文芸評論家の三宅香帆さんの著書のタイトル『「好き」を言語化する技術――推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しか出てこない』(ディスカバー・トゥエンティワン)だという。

「好き」「やばい」など汎用的な言葉では物足りない、自分の心の内を言葉にして伝えたい―。伝えたいという欲求が、「言語化」という既存の言葉に新しい命を吹き込んだことが、辞書編集者の琴線に触れたのかもしれない。

三省堂  辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2024」

1 言語化 漠然と抱いた意識や思考、またいわく言い難い欲求や感情を、できる限り正確に言葉にして表すこと。「盛り上がった気持ちを言語化する」
2 横転 本来の意味は、左または右の方へ回転すること。転じて、思わずずっこける(ほど驚く)こと。「点数低すぎて横転
3 インプレ インターネット上の広告やSNSの投稿などが閲覧された回数を言う俗称。広告料の支払いの算定などの指標として使われるが、実際には内容の良否善悪や真偽を裏付けるものではない。「インプレゾンビ」は広告収益のためにインプレを増やそうと大量の迷惑投稿をするアカウントを罵って言う語
4 しごでき 仕事ができる、手際がいい様子。「しごできで、しごはやな人」
5 スキマバイト 空いた時間を活用する不定期アルバイト。専用のアプリ上でマッチングして短時間の雇用契約を結ぶ。手軽に働けるメリットの一方で、人材の使い捨てや犯罪に引き込まれるなどのデメリットもある
6 メロい 見ている方が夢中になって、だらしなくなるほど、圧倒的な魅力のある様子。擬態語「めろめろ」の「めろ」+形容詞語尾「い」。「推しのダンスがメロい
7 公益通報 職場の同僚、上司などによる法令に違反行為を、定められた窓口に訴えること。由来は、2006年施行の公益通報者保護法で、公益通報した側が不利な扱いを受けないことを定めている
8 PFAS 有機フッ素化合物の一部であるペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称。水や油をはじく性質からはっ水剤やコーティング剤など幅広い用途で使用されてきたが、自然分解されにくく、環境中や体内に長く蓄積するなど有害性が指摘されている。地下水や河川、土壌や水道水で検出が相次ぎ問題となっている
9 インティマシーコーディネーター 映画やテレビなどで性的なシーンを撮影する際に、演出側の意図と俳優の意向を確認し、調整役として働く人。安全かつ快適に、双方合意のもとで撮影が行われるよう、俳優を身体的・精神的にサポートする
10 顔ない 驚いた / 困った / はずかしい、といった気持ちを表す。「質問に答えられなくて顔ない

表中の語釈は三省堂作成のものをベースに、編集部でアレンジを加えている

バナー写真:三省堂「今年の新語2024」の大賞発表風景(2024年12月4日、三省堂提供)

三省堂  辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2024」

1 言語化 漠然と抱いた意識や思考、またいわく言い難い欲求や感情を、できる限り正確に言葉にして表すこと。「盛り上がった気持ちを言語化する」
2 横転 本来の意味は、左または右の方へ回転すること。転じて、思わずずっこける(ほど驚く)こと。「点数低すぎて横転
3 インプレ インターネット上の広告やSNSの投稿などが閲覧された回数を言う俗称。広告料の支払いの算定などの指標として使われるが、実際には内容の良否善悪や真偽を裏付けるものではない。「インプレゾンビ」は広告収益のためにインプレを増やそうと大量の迷惑投稿をするアカウントを罵って言う語
4 しごでき 仕事ができる、手際がいい様子。「しごできで、しごはやな人」
5 スキマバイト 空いた時間を活用する不定期アルバイト。専用のアプリ上でマッチングして短時間の雇用契約を結ぶ。手軽に働けるメリットの一方で、人材の使い捨てや犯罪に引き込まれるなどのデメリットもある
6 メロい 見ている方が夢中になって、だらしなくなるほど、圧倒的な魅力のある様子。擬態語「めろめろ」の「めろ」+形容詞語尾「い」。「推しのダンスがメロい
7 公益通報 職場の同僚、上司などによる法令に違反行為を、定められた窓口に訴えること。由来は、2006年施行の公益通報者保護法で、公益通報した側が不利な扱いを受けないことを定めている
8 PFAS 有機フッ素化合物の一部であるペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称。水や油をはじく性質からはっ水剤やコーティング剤など幅広い用途で使用されてきたが、自然分解されにくく、環境中や体内に長く蓄積するなど有害性が指摘されている。地下水や河川、土壌や水道水で検出が相次ぎ問題となっている
9 インティマシーコーディネーター 映画やテレビなどで性的なシーンを撮影する際に、演出側の意図と俳優の意向を確認し、調整役として働く人。安全かつ快適に、双方合意のもとで撮影が行われるよう、俳優を身体的・精神的にサポートする
10 顔ない 驚いた / 困った / はずかしい、といった気持ちを表す。「質問に答えられなくて顔ない

表中の語釈は三省堂作成のものをベースに、編集部でアレンジを加えている

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