「コイルガン」と呼ばれるものを所持していたとして、栃木県に住む29歳の男性が、銃刀法違反の疑いで逮捕された。警視庁によれば、男性は10年ほど前にコイルガンを製造する様子や、試し撃ちの動画を公開していたといい、押収したコイルガンを検証したところ、実弾を入れて撃つことができ、殺傷能力も認められたという。
【映像】逮捕された男性(29)のコイルガン試し撃ち動画
2024年6月改正の改正銃刀法では、2025年3月までをめどにコイルガンの無許可所持が禁止される。そもそもコイルガンとは何なのか。銃器評論家の津田哲也氏は「ガンと名前は付いているが、電子工作のようなもの。コイルに電流を流したら磁石が付く、電磁石の原理だ」と説明する。
拳銃が火薬で弾丸を飛ばすのに対して、コイルガンは電磁石の力で弾丸を飛ばす仕組みだ。津田氏は、今回の押収品は「せいぜい準空気銃レベル」と推測する。威力は「20J(ジュール)ぐらい」とし、約300〜500Jの拳銃や、1500〜3000Jと言われるライフルとは差があり、「3.5〜20Jレベルだと、人間に軽傷を負わせられても、重傷や殺害は不可能」との見解を示す。とは言っても、海外では狩猟に使える威力のコイルガンも存在するという。
ネット上では、コイルガンの作り方解説などの動画が、10年ほど前から存在していた。2022年に発生した安倍元総理銃撃事件でも、犯行に使われたのは山上被告が自ら工作した銃で、ネット動画を参考に作成したと供述している。この事件や、長野で警察官2人を含む4人が猟銃などで殺害される事件といった凶悪事件が相次いだことで、銃刀法が改正された。
津田氏によると、「銃」の定義は、火薬やガス、空気の圧力で金属性の弾丸を飛ばすものだ。「除外されているものも適用していこうということで、『コイルガンも可能性がある』と先読みをされた」。警察の銃器取り締まりとして「拳銃型のものを優先的に取り締まる傾向」にあることも背景にあると推測する。
では、コイルガンの作成者は、一体どのような目的を持っているのか。「先月中旬にいきなり警察が家宅捜索令状を取ってきて面食らった。約10名がアパートの中で身動きが取れない状況で、僕はベッドの上で小さくなっていた」という、コイルガン愛好家・こいるガン氏に話を聞いた。
こいるガン氏は、科学系の実験動画を公開していて、それが警察のサイバーパトロールで発見されたことが「ガサ入れ」につながった。「自然科学に興味があり、化学(ばけがく)の実験にいろいろな薬品を使う。『混ぜ合わせると爆薬が作れるのでは』との推論のもと、警察が調べに来た。もちろんそのようなものはなく無罪放免だが、今後は危険な実験はあまりできない」と語る。
コイルガンも実験の延長線で所持していたが、威力が抑えられ、改造されるおそれもないと主張して、押収されず、罪にも問われなかった。「ミリタリー系の知識もなく、理科や電気が好きで作り始めた」。流行のきっかけは、「約10年前にアニメ『とある科学の超電磁砲(レールガン)』が放送されて、電磁砲つながりのコイルガンがはやったのでは」と推測する。
実際に作成する難易度は、どの程度なのか。「コイルガンで人を傷つけるレベルを作ろうと思うと難しい。実際の拳銃を作った方が簡単なくらいだ」。
元徳島県警捜査一課警部の秋山博康氏は「そもそも日本は銃社会になってはならない。過去にモデルガンの改造ピストルは科警研で殺傷能力があると判明し銃刀法で検挙、またエアガンには殺傷能力はないが人を撃ったとして傷害罪で逮捕した。エアガンでも殺傷能力がある改造銃にすれば該当とされる可能性はある」と説明した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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