千葉県印西市内に建て替えを予定している次期中間処理施設(新クリーンセンター)の建設工事の入札で、二つの企業グループのうち、運営費などを含む入札価格が約28億円高い企業のグループに落札された。一部の住民が反発し、住民監査請求をする事態になっている。なぜこんなことが起きたのか。
新センターは2028年度の稼働をめざして印西市吉田地区に建設し、隣接する白井市と栄町のごみも受け入れる。現在の印西クリーンセンターは1986年から稼働し、老朽化している。
現在のセンターを運営し、2市1町でつくる「印西地区環境整備事業組合」の議会が2月に開かれ、新センターの工事請負契約を「JFEエンジニアリング」のグループと結ぶ議案が可決された。運営費などを含めた予定価格は約405億円で、同グループの入札額は約290億円。別の企業グループは約262億円だった。
評価はわずかな差 住民「逆転、おかしい」
入札には、類似施設を建設した実績があるかなどの参加資格を設け、2社が基礎審査に合格した。価格を評価する「価格要素審査点」と、施工体制や地域貢献、エネルギー・資源回収など14項目の「非価格要素審査点」を各50点満点の計100点満点で審査した。「非価格要素審査点」については、有識者や副市町長、移転先の住民の計7人による選定委員会が審査した。
評価はわずかな差で決まった。82・76点のJFEグループが、82・41点の別グループを0・35点上回った。内訳は、「価格要素審査点」が50・00点の別グループに対し、JFEグループは45・21点。「非価格要素審査点」は別グループの32・41点を、JFEグループが37・55点と上回った。
批判の声を上げた住民らは「僅差(きんさ)で多額の税金をつぎ込むのは、住民感覚として受け入れられない」と指摘し、「非価格要素審査点」で点差が開いたと主張した。例えば、災害対策の評価では、備蓄の量や一時避難スペースの差があり、JFEグループが1・25点高い。
住民監査請求を出した1人で、白井市の徳本悟さん(74)は「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と地方自治法で定められていることに触れ、「建設以外の項目で逆転し、28億円の税金が使われるのはおかしい」と訴える。
2月に出した住民監査請求は「請求内容に該当しない」として3月に棄却された。住民は再度、監査請求をする予定だ。
契約締結を決めた2月の議会で、反対議員は入札を評価する算定方式に疑問を呈し、「28億円は大きい。やっぱり納得できない」。賛成議員は「選定委が長い時間をかけて膨大な資料を読み解いた」。落札後の反対は「後出しじゃんけん」と批判した。(伊藤繭莉)
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全国の526の市区町村や広域事務組合などで組織し、廃棄物処理事業を効率的に進めるための調査をする「公益社団法人全国都市清掃会議」(東京都文京区)の荒井喜久雄・元技術指導部長によると、地方自治法で定める通り、公共事業では最低価格で応札した業者が落札する「最低価格落札方式」が基本だが、廃棄物処理施設の建設工事契約では、談合が課題になり、価格と価格以外で評価する「総合評価落札方式」が導入された。
ごみを受け入れる地域は直接的なメリットが少ないが、安全で安心な運営には地元の理解が欠かせないため、応札する事業者はさまざまな手立てを講じている。地元の工事業者の利用や行事への参加といった地域貢献のほか、施設の防災拠点化などが「非価格要素審査点」の項目に盛り込まれている。
荒井さんは印西のケースについて、「わずかな差で、非価格要素審査点が価格要素審査点を逆転する入札は多くない」と話す。
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