東京都知事選、衆院選、そして兵庫県知事選と国内で注目の選挙が相次いだ。この中で、テレビにおける選挙報道は、ネット上に大きな批判の声に晒されることにもなった。象徴的なのが、斎藤元彦知事が再選を果たした兵庫県知事選。パワハラ疑惑などで失職するまで、新聞・テレビといった「オールドメディア」と呼ばれるメディアが斎藤知事を叩く報道を繰り返した後、選挙期間に入ると放送法・公職選挙法のもと、ピタリとストップ。その間にネット上では、斎藤知事を推す声が盛り上がり、当初の予想を覆し、圧勝で斎藤知事が再選を果たした。
【映像】メディアごとの信頼度(比較グラフ)
選挙後には大物司会者が「大手メディアのある意味、敗北」と発言したことも批判の対象となり、テレビにおける選挙報道の課題が浮き彫りになる中、今後はどうすべきなのか。『ABEMA Prime』では存在感を増すネットとの比較も踏まえ、考えた。
■テレビの選挙報道、なぜ批判される?
テレビの選挙報道が批判されるポイントはいくつもある。上記の法律を意識した結果、選挙期間中に報道が減り、また「公平・公正・中立」としながらも、全候補者が揃わないため討論会が行われなかったり、逆に主要・有名候補以外が扱われない、ということも起きている。また「民主主義の敗北」「SNSのデマに踊らされた」など、有権者の投票行動を下に見る雰囲気にも、反発が出ている。
今やネット上では選挙期間中も様々な動画が飛び交い、投票直前まで有権者がそれを見ながら誰に1票を投じるか考える時代になっている。ところがテレビでは「放送法」「公職選挙法」という2つの法律を意識した報道をせざるを得ないのが実情だ。
放送法は「公安及び善良な風俗を害しない」「政治的に公平である」「事実をまげない報道」「できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」ことが求められ、公職選挙法では「選挙運動放送の制限」「人気投票の結果公表の禁止」「虚偽放送の禁止」「放送法による編集の自由を制限しない」ことなどが定められている。
ただし、元新聞記者でジャーナリストの佐々木俊尚氏は「選挙期間中にメディアは中立・公正でなくてはいけない縛りはある。ただそれでテレビと新聞の影響力が落ちたというのはおかしな話。どちらかと言えば、選挙期間以前、公示日よりも前に斎藤氏に対してものすごく一方的な大報道をし、公示日以降はしないことを考えると、中立・公正性には疑問がある」と、兵庫県知事選の際にあった報道の在り方を問題視した。
またリディラバ代表の安部敏樹氏も「選挙期間中に(選挙報道が)やれなくなると言うが、別にやれないわけじゃなくて『やらなかった』。(斎藤知事は)もともと公益通報の話とかパワハラの話で辞任していて、これが論点だった。そうであれば、選挙期間中であっても質をちゃんと担保してやるべきで、びびってやっていないだけ」と語った。
■テレビと同列に並び始めたネット
一方、ネットの中では選挙期間中でも活発に情報が発信され、また有権者たちが支持する候補者に関する動画を切り取り、さらに拡散するという行動もさらに広がった。安部氏は、この関係についても注目している。「まずテレビがどうなっていくかというと、SNSとかと並んで、メディアチャンネルの1個となっていく。テレビというのが独占的なポジションは変わってくる。ただ一方で、チャンネルはもちろん残るので、これまで持っていた、メディアが誰を本当に推したいのか、という色がより濃く出てくる」と分析した。
また作家の三宅香帆氏は「今の視聴者は、SNSでいろいろなチャンネルを見るのに慣れているので、いろいろな意見や立場の人の声を聞きたい人が割と多いと思う。でもテレビの報道は、もちろん時間も短いのもあって、とりあえず『このニュースでの結論はここです』とか『これが正しいです』みたいな、方向性に議論を持っていこうとか、かなり台本が決まっている。視聴者からすると、1つの方向性しか報道していないのではと思う要素があり、ネットの方がいろいろな方向性が落ちている」と、ネットの優位性を語った。
さらに実業家の堀江貴文氏も、ネットがもはや全世代のものだとコメント。「たぶんコロナの時にみんな家に引きこもって、スマートテレビで見るようになったから、テレビは既にもうチャンネルの1個になってしまっている。ABEMAもあり、Netflixもあり、コネクテッドTVで見られるからあまり気にしていないし『高齢者はテレビ』みたいなことも言われていたが、高齢者も見なくなっている」と、テレビ離れの加速についても触れていた。
(『ABEMA Prime』より)
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