SNSを通じて犯罪の実行役を募る「闇バイト」対策として、警察庁は関連する用語を検索した人に向けた広告配信を2025年に始める。首都圏を中心とした連続強盗事件は闇バイトで集められた10〜20代の実行役が目立った。応募の危険性や警察による保護の取り組みについて、誘い込まれやすい若者に直接発信する狙いがある。
新たな情報発信は「ターゲティング広告」と呼ばれる手法を活用する。SNSや検索エンジンで関連する用語の入力があった端末に絞って広告を表示させる。対象とする用語は闇バイトで使われることが多い「ホワイト案件」や「高収入」などを軸にする。
広告の内容は「捨て駒にならないで」と応募を思いとどまらせるものや、「あなたを保護します」と応募者に犯罪への加担をやめさせるメッセージを想定する。
近年の闇バイトはSNSを通じ離合集散する「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」が主導し、合法的な求人を装う手口が目立つ。強盗事件では応募時に身分証明書を送信させられ、家族への危害を心配し途中で抜け出せなかった実行役もいた。
トクリュウの関与が疑われる特殊詐欺の実行役も多くは闇バイトで集められている。23年に特殊詐欺事件で摘発された容疑者約2400人のうち85%は10〜30代だった。捜査幹部は「トクリュウの犯罪を止めるには実行役のリクルートを阻む必要がある」とみる。
各警察はホームページやSNSの公式アカウントでも同様の呼びかけを続けている。警察庁幹部は「インターネットに膨大な情報があふれるなか、闇バイトに応募する可能性がある若年層に効果的に情報を届ける手段の確保が課題となっていた」と話す。
警察庁によると、首都圏を中心とした連続強盗事件は8月以降で19件発生。被害者が死亡する事件も起き、体感治安は悪化している。警察庁は29日に閣議決定された24年度補正予算案に関連費用を盛り込んだ。25年1月にも配信を始める方針としている。
被害者対策も強化する。トクリュウは強盗や特殊詐欺など様々な犯罪手法で、同じ被害者を繰り返し狙う傾向があるためだ。
トクリュウは標的を選ぶため名簿を作成しているケースが多い。警察庁は捜査過程で押収した名簿をもとに、掲載されていた人に防犯対策の強化を含め注意を促す取り組みも25年1月にも始める。民間のコールセンターに呼びかけを委託する。
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