叡山電鉄(京都市左京区)の「もみじのトンネル」の紅葉が見頃を迎えるころ、沿線では意外な食材が旬を迎える。シイタケだ。市場に出回るシイタケの9割は菌床栽培だが、叡電は原木栽培。なぜ、鉄道会社がシイタケを?
叡電鞍馬線は出町柳と洛北の鞍馬(くらま)を結ぶ。沿線は山林が多く、社員たちが電車の運行の妨げになりそうな樹木を定期的に伐採したり、台風の被害などに遭った倒木を片付けたりしてきた。
廃棄処分となる木々のうち、クヌギやナラなどをひそかに持ち帰る社員がいた。総務部リーダーの林直彦さん(48)。めざとく見つけた同僚が「持って帰ってどうするん?」と聞くと、シイタケ栽培の原木にしているという。比叡山のふもとの八瀬で育ち、「小さい頃から普通にやってたんで」。
会社全体で取り組もうという話になった。
7~8年前、有志が集まり、試しに菌打ちを始めた。シイタケが育つのに適した湿度に恵まれつつも、風通しのよい沿線の社有地に、廃材などを使ってシイタケ小屋を整備した。
京都市森林組合やシイタケ栽培の本場・大分県農林水産研究指導センターに助言を求め、栽培技術を磨いた。「身はぷりっぷり。うまみもたっぷり。味だけは自信があります」と林さん。
収穫は春と秋の年2回。19年から販売を始め、昨年は2260個を収穫した。今年の収穫目標は6500個だ。
「本業のかたわら、手のすいている社員が声をかけあい、草刈りをしたり収穫したり。『京都えいでん原木しいたけ』のパッケージもイラストの得意な社員が描きました」と鉄道部技術課助役の山川誠さん(46)。
収穫したシイタケは乾燥させ、1パック60グラム入り1300円で出町柳駅で売るが、あっという間に売り切れるという。規格外のシイタケは出町柳駅前のおにぎり店「おにぎり利次郎」に卸し、米粉の揚げシイタケ(1本300円)に。生シイタケはイベントなどで限定販売されることがあるという。
役目を終えた原木は社員の手でカットし、クワガタやカブトムシの産卵木に。「沿線の豊かな自然の恵みを無駄にしない」(同社広報)という。
問い合わせは同社(075・702・8110)。
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