裸眼視力1.0未満の小中高校生の割合が僅かに減ったことが、27日に公表された文部科学省の2023年度の学校保健統計調査で分かった。新型コロナウイルス禍の収束によって屋外で過ごす時間が増え、視力改善につながった可能性がある。肥満傾向の子どもの割合も低下傾向だった。
調査は全国の国公私立の幼稚園や小中高校から抽出した健康診断結果をもとに、約321万人分を集計した。
調査結果によると、裸眼視力が1.0未満の幼稚園児は22.9%(前年度比2.0ポイント減)、小学生は37.8%(同0.1ポイント減)、中学生は60.9%(同0.3ポイント減)、高校生は67.8%(同3.8ポイント減)だった。
教室の最前列に座っても黒板の文字が読みづらいとされる「視力0.3未満」の子どもの割合は、中学生以外で減少。小学生は同0.9ポイント減の11.1%。高校生は同2.7ポイント減の39.5%だった。
子どもの視力低下の大きな原因である近視は、近い距離のものを長時間見ることで発症しやすいとされる。近年は小中高校生の視力低下が止まらず、原因として、スマートフォンやタブレット端末を使って勉強やゲームをする時間の増加が指摘されてきた。
文科省によると、23年度の結果について、専門家からは「コロナ禍が収束して、近視抑制に効果があるとされる外遊びができるようになったことが影響したと考えられる」との見解が示されている。
近視は目の角膜から網膜までの長さ(眼軸長)が伸びることで起きるが、太陽光を浴びると、伸びが抑制されるとの研究結果も報告されている。
長期的に見ると視力が低い子どもの割合は依然として高く、文科省は平日は1日90分、休日は同120分を目安に屋外で過ごすことを推奨。タブレット端末などと目を30センチ以上離し、30分に1回は目を休ませるといった対策を呼びかけている。
肥満にも改善傾向がみられた。標準体重より20%以上重い「肥満傾向」の子どもの割合は、小6男子は前年度比0.9ポイント減の13.1%、小6女子は同0.8ポイント減の9.7%だった。
肥満傾向の子どもは06年度以降は減少傾向だったが、20年度に大幅に増加していた。和洋女子大大学院の村田光範客員教授(小児保健学)は「コロナ禍による長期休校や運動不足が影響した」と説明する。
今回の結果については「1年だけでは傾向は分からないが、改善傾向が今後も続くなら、コロナ禍の収束が影響しているといえるだろう」としている。
調査は例年4〜6月に行うが、20〜23年度はコロナの影響で年度末まで延長した。文科省は調査時期が異なるため、単純比較はできないとしている。
(森紗良)
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