年収が一定水準を超えると税金や社会保険料が発生し手取りが減る「年収の壁」について、国会では見直しに向けて議論が進んでいる。一方で、「壁」を超えた世界はどうなのか?専門家は社会保険への加入は長い目でみると「家計にとって良いこと」と話す。

年収の壁問題 現状は?

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宮崎市のスーパーマーケット「Foodaly霧島店」では、従業員の約7割がパート勤務。忙しさが増す年末を前にしているが、パート従業員は「壁」を意識して働いているという。

ハツトリー 管理部 黒木俊一部長:
106万円の壁が一番、従業員が意識しているところ。これから年末に向けて忙しくなる時期なので、ここで調整しないといけないのはなかなか厳しい。働けるだけ働きたいという声はあるので、年収の壁がネックになっていると実感している。

小学生の子供が1人いて、夫の扶養に入りながら生活を支えるパート従業員の女性は「この先、子供が大きくなるにつれて働く時間が増えてくると思うので、103万円が引き上げられるのと同じように、106万円や130万円の壁も引き上げてもらえると働きやすい」と話した。

将来の年金と、今の生活、どちらを重視するか?との質問には、「教育費もかかるので、今、手元にお金がある方がありがたい」という答えが返ってきた。

ハツトリー 管理部 黒木俊一部長:
もっと働きたいと思う従業員が思い通りに働けるような制度や、問題の解消につながることを期待している。

税金の壁と社会保険の壁

年収の壁には2つの壁がある。「税金の壁」は103万円、これを超えると所得税がかかる。この課税ラインを年収178万円に引き上げることで手取りを増やそうというのが、国民民主党が衆院選で掲げた政策で、政府は「令和7年度税制改正の中で議論し引き上げる」と明記した総合経済対策を11月22日に閣議決定した。

もうひとつの壁である「社会保険の壁」は、年収が106万円もしくは130万円を超えると社会保険料が発生し、手取りが減ってしまうため、働き控えの原因とされている。

宮崎県中小企業団体中央会の調査では、回答した企業の約4割でパート労働者が就業調整をしている。理由については「106万円または130万円を超えると社会保険料が発生するため」いう回答が約6割と半数を超えた。

家計に良い働き方とは?

厚生労働省は年収に関係なく、週に20時間以上働いた場合の社会保険への加入を検討している。家計に良い働き方を専門家に聞いた。

ファイナンシャルプランナーの二宮清子さんは、「手取りが減って“働き損”に見えるかもしれないが、社会保険への加入は“長い目でみると”家計にとって良いこと」と話す。

ファイナンシャルプランナー 二宮清子さん:
目先の損得でやっているのがすごくもったいない。税金や社会保険料を払わないということより、収入を上げていくことの方が若い世代には重要だと思う。

社会保険に入るか入らないかで、年収には大きな差が出る。社会保険に入っている年収138万円の人は、社会保険に入っていない105万円の人と比べると、10年間の手取りには120万円の差が出てくる。二宮さんは、「ライフステージに合わせて働く時間を増やすことが重要」と話す。

ファイナンシャルプランナー 二宮清子さん:
子育て世代は教育費や住宅取得、老後資金、そもそも生活費が上がっていく世代なので、年収も上げていかないといけない。最初は壁の内側で働きつつも、少しずつ年収を上げて「壁」を乗り越えて働いた方が、豊かな生活が送れると相談者には伝えている。

また、社会保険に加入すると、年金の受け取り額が増えるだけでなく、傷病手当金や出産手当金、育児休業給付などを受けられるというメリットもある。

ファイナンシャルプランナー 二宮清子さん:
今と将来の生活を考えてどう選択していくか、この機会に改めて考えていくことが大事だと思う。

<二宮清子さん>
宮崎市在住のファイナンシャルプランナー。「合同会社リーフ」代表。
生活総合情報サイト「オールアバウト」では、家計簿・家計管理のガイドを担当。赤字家計を脱出した自分の体験から、節約や家計簿についてのアイデアを発信している。
2023年度「金融知識普及功績者表彰」(金融庁、日銀主催)

(テレビ宮崎)

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