「推進地域」指定の29都府県 571市町村から回答
情報発表の際にとるべき防災対応を認知していたか
住民への周知について地域防災計画への記載は
今後に向けた課題や改善点 自治体からの意見は
NHK放送文化研究所は全国対象にアンケート実施
「巨大地震警戒」「巨大地震注意」 過半数“違い知らなかった”
“新たな防災対策取った” 25%
どんな情報が知りたかったか
専門家“対策の優先順位再確認を”“より具体的な情報発信必要”
ことし8月、日向灘で発生したマグニチュード7.1の地震を受けて、「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表されました。内閣府は、検証や改善につなげるため、呼びかけの対象となった「推進地域」に指定されている関東から沖縄にかけての29都府県と707市町村を対象にアンケートを実施し、対象となった都府県すべてと571市町村から回答を得ました。
「巨大地震注意」では、推進地域に日頃の地震の備えを再確認するよう求めましたが、情報が発表された際にとるべき防災対応を認知していたかについて、「十分認知し、速やかに対応できた」と回答したのは都府県では52%だったのに対し、市町村では22%にとどまりました。一方、「一定の認知はしていたが、発表を受けた当時、対応に戸惑った」と回答したのは都府県では38%で、市町村では65%にのぼりました。
また国は、「巨大地震注意」が発表された際の情報伝達の経路、方法や施設・設備の点検などについて自治体が作成する地域防災計画に盛り込むよう求めています。市町村の中で、▽住民への周知について記載しているのは60%でしたが、▽避難場所や避難経路の確認は39%、▽災害対策本部の設置は28%、▽備蓄品の確認・点検は20%、▽参集体制は10%の記載にとどまりました。
今後に向けた課題や改善点を尋ねたところ、地域防災計画の記述の拡充や、職員の参集体制を見直すといった回答があった一方、国に対して「巨大地震警戒」と「巨大地震注意」で取るべき対応の違いを明確にするよう求める声や対応すべき期間や求められる対応を見直すよう訴える意見もあったということです。
一方で、「南海トラフ地震臨時情報」の受け止めについてNHK放送文化研究所がアンケートしたところ、情報を受けて防災対策をした人は、呼びかけの対象となった地域でも2割余りにとどまっていたことがわかりました。対策の内容も備蓄が多く、避難経路や避難場所の確認などにはあまりつながらなかった実情が浮き彫りになりました。NHK放送文化研究所は、臨時情報に対する住民の意識や行動の変化を把握するため、10月に全国を対象にインターネットで調査を行い9913人から回答を得ました。このうち、臨時情報を見聞きしたと回答したのは8296人で83.7%でした。
南海トラフ臨時情報には「巨大地震警戒」と「巨大地震注意」の2種類がありますが、情報を見聞きした人に発表前の段階で2つの違いを知っていたか尋ねたところ、▽「知っていた」が4.9%▽「ある程度知っていた」が17.2%▽「聞いたことはあるが内容までは知らなかった」が26.8%▽「知らなかった」が51.2%でした。臨時情報の対象となった防災対策の推進地域を含む府県でみると、▽「知っていた」が5.3%▽「ある程度知っていた」が18%▽「聞いたことはあるが内容までは知らなかった」が26.4%▽「知らなかった」が50.3%と大きな変化はありませんでした。
国は今回、防災対策の推進地域に、1週間、地震への備えを改めて確認してほしいと呼びかけましたが、新たに防災対策をとった人は、▽全国では19.8%、▽推進地域を含む府県でも24.7%にとどまりました。
推進地域を含む府県で「新たに対策を取った」と答えた人に具体的な内容を尋ねたところ、▽「飲料水や食料などの備蓄」が62.7%と最も多く、▽次いで「飲料水をふだんより多めに購入」が52.7%と備蓄対策が目立ちました。一方、▽「家具の転倒防止」は22.9%、▽「災害時の家族との連絡方法の確認」が21.5%、▽「津波からの避難に備えた、避難場所や避難経路の確認」は19.9%となりました。
推進地域を含む府県の人に、当時どんな情報が知りたかったか尋ねたところ、最も多かったのは、▽「ふだんに比べてどの程度、地震のリスクが高まっているのか、具体的に伝えてほしかった」で48.2%、▽「どのような防災対策をとればよいのか、具体的に伝えて欲しかった」が28.6%などでした。
東京大学大学院 関谷直也教授「対策をとった人の割合は非常に低い。対策の内容も、まずは避難場所や避難ルート、家族との連絡手段の確認など命を守るための対策をすべきで、生き延びたあとの生活のための備蓄の優先順位は低いはずだ。対策の優先順位も再確認してほしい」「『地震への備えの再確認』という呼びかけが一般的過ぎるため、備蓄などの『ふだんの対策』を意識してしまったのではないか。とるべき行動についてより具体的に情報発信をすることが政府やメディアには求められる」
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