今月、兵庫県・姫路市の会社員の女が、保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された。
【映像】「1日100回のたん吸引」“医療的ケア児”家族の生活とは?
女は去年1月、持病のため寝たきりでたんの吸引が必要な8歳の娘を自宅に残して外出し、窒息死させた疑いが持たれている。警察によると、自宅を出て翌日帰宅し、119番通報するまで少なくとも17時間にわたって家に置き去りにしたとみられている。
ネットでは「この母親はひどい 逮捕されて当然」「たん吸引のお母さんの話見てると苦しくなる 8年間って本当にすごいよ…」「誰か何かできること無かったのかな」などの声が寄せられた。
朝日新聞によると、この母親は3人の子どもとの4人暮らしで、主に1人で介護していたという。逮捕された母親への非難と共に多く寄せられたのが同情の声だった。
「同じ医療的ケア児の家族として非常に心が痛んだ」
「医療的ケア児」の家族に向けて情報発信や交流の場を提供している一般社団法人スペサポ 鈴木啓吾代表理事は「同じ医療的ケア児の家族として、このニュースを見たとき非常に心が痛んだ。こうしたことが二度と起きてはいけない」と話す。
寝ている間も安心できない
医療的ケア児とは、人工呼吸器の装着やたんの吸引といった医療的なケアが日常的に必要な子どもたちのこと。2万人以上の子どもが在宅でのケアを必要としている。
今年で4歳になる鈴木さんの娘も医療的ケア児だという。
「たんの吸引は一日数十回、多いと100回以上必要。毎日2回の薬剤吸入と排たん補助、24時間365日の人工呼吸器管理、そして口から物を食べられないため一日4回の胃ろうからの経管栄養が必要だ」(鈴木さん、以下同)
鈴木さんは日々緊張感に包まれた生活を送っているという。
「寝ている間も呼吸器につながれているが、子どもが何かのはずみに呼吸器の装着部分を外してしまうこともある。するとアラームが鳴って私たちも起きるのだが、その緊張は非常にある」
こうした中、鈴木さんが活用しているのが、子どもを一時的に預けて親が休むことができる「レスパイトケア」というサービスだ。
「肉体的・精神的に疲労がたまったときに、まとまった休みが必要だ。利用料は国が負担してくれるサービスで、主に短期入所という福祉の制度に則ったもの。休息を取ることで、改めてケアのある生活と向き合えることができる」
一方でレスパイトケアの施設の少なさなどの課題も語る鈴木さん。今後社会に求められる支援として施設の拡充や支援者の育成、医療的ケア児に対する認知度の向上を挙げる。
「医療的ケア児ってどんな子どもなのか? 医療的ケアって何なのか? 内側にいる家族や支援者だけではなく、関係ない方々にも知っていただくことが非常に大事だ」
すべてを家庭で完結させない
ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介氏は「今回の事件については、まだ詳細がわかっていない。お子さんが1人亡くなっているという事実は重く、軽々しく擁護することはできないし、また逆に突き放して非難することもできない」と指摘したうえで、医療的ケア児の対応について以下のように述べた。
「ケアする側は常に緊張を強いられ、精神的に非常に追い込まれやすい立場に置かれている。最悪の事態を避けるためにも『ケアされる側』だけでなく『ケアする側』のケアも考えるべきだ」
「家事・育児などのケア労働は女性に負荷が集中しがちで、日本にはいまだに『介護も育児も家庭でやるものだ』という雰囲気がある。すべてを家庭で完結させようとするのではなく、社会全体で支え合っていかないとケアラーが潰れてしまう。早い段階で福祉につなげていくことが大切で、そのためにもレスパイトケアをもっと広めていかないといけない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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