日本でも微細なプラスチック人体から 専門家が警鐘

東京農工大学・高田秀重教授のグループはことし2月、人の血液から1000分の1ミリ以下の微細なプラスチックが検出されたという、国内では初めての研究成果を報告しました。

検出されたのは食品容器など幅広く使われている「ポリスチレン」。
国内で人間ドックを受けるなどした11人の血液を分析したところ、4人から検出されたということです。

高田教授は、環境中で微細化していくとした上で、
▽粒子を取り込んだ魚などの海洋生物を食べることや、
▽大気中に舞っている粒子を吸い込むなどして
体内に摂取されている可能性があると指摘しています。

東京農工大学 高田秀重教授
「プラスチックに含まれる添加剤の中には、人の健康や生殖に影響を与えるような成分が含まれている。細かくなってマイクロプラスチックになっていくと簡単に溶け出して生物に取り込まれてしまうようになる。有害性の高い物質は今までも国際条約で規制が行われてきたが、プラスチックにはまだ有害性の検討が不十分な物質が無数に含まれている。このため、使用量と生産量全体の削減が非常に大事だ」

世界で年間2200万トンが環境中に流出か

OECD=経済協力開発機構によりますと、世界ではプラスチックごみの量は2019年には3億5300万トンと20年で2倍以上に。

リサイクルされたのは9%にとどまり、20%以上は適切に管理されず、このうち2200万トンが海や陸など環境中に流出したとされています。

プラスチックごみ輸入急増のマレーシアでは異変

近年プラスチックごみの輸入が急増しているマレーシアでは、異変が起きていました。

首都クアラルンプールに隣接するセランゴール州にはリサイクル工場が多数あり、プラスチックごみはリサイクルされて新たな商品として販売されています。

一方、分別が不十分だったり汚れがついていたりしてリサイクルできないプラスチックごみも持ち込まれ、政府から許可を得ていない業者などによって違法な投棄や焼却が頻繁に行われていると指摘されています。

この地域に住む36歳の女性は、プラスチックごみの違法な焼却による健康被害を訴える1人。

朝になるとプラスチックを燃やしたようなにおいが辺り一面に立ちこめ、家族3人とも鼻づまりやのどの痛みなどに悩まされているといいます。

マレーシアはプラスチックごみをリサイクルが可能な資源として輸入していますが、中国が輸入規制を強化した2018年以降、マレーシアの輸入が急増しました。

地元で監視活動を続ける人によれば、プラスチックごみの投棄現場では外国語が書かれているパッケージが多く見つかっているといいます。

監視活動を続けるNGO団体責任者 プア・レイ・ペンさん
「地元では見たことのない商品ばかりで、多くはヨーロッパからきている。これが違法に輸入されたことを物語っている。非常に不公平で私たちへの人権侵害だ」

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交渉委員会のバジャス議長は交渉を前に、生産規制については具体的な記述を避ける一方、環境中へのプラスチックの流出防止策を各国に義務づけることなどを盛り込んだ条文の素案を各国に示していました。

しかし25日の全体会合では、この素案を元に交渉を進めることについて、産油国などが「そもそも何を条約の対象とするかについても話し合うべきだ」として反対。

条文案についての実質的な議論は予定より遅れて始まりました。

会議は12月1日までの予定 難しい交渉に

会議は12月1日まで開かれる予定ですが、各国の意見の隔たりが大きい中で難しい交渉が予想されます。

また、会議ではこのほか、
▽プラスチックに使用され発がん性など健康への影響が懸念される化学物質のほか、使い捨て食器などの製品を規制するかどうか、
▽適切なリサイクルや処分のための国際的な製品設計の基準、
▽環境中への流出防止策の各国への義務づけなどについて
議論が行われる見通しです。

専門家“日本は海流の上流側 被害者にも加害者にもなりやすい”

プラスチックごみがどのような経路で海に流出しているのか明らかにしようという研究が日本で行われています。

鹿児島大学工学部教授の加古真一郎さんは、日本の海岸に流れ着くプラスチックごみの量の変化や、海に流出する経路について研究しています。

加古さんはプラスチックごみが海流に乗って日本に流れ着くメカニズムについて「日本はアジアのなかで海流の下流側にあり、中国とか韓国などのプラスチックごみが流れ着きやすい一方、世界全体で見るとアメリカやハワイへ向かう海流の上流側にある。日本は国境を越えて流出する海のプラスチックごみに関して被害者にも加害者にもなりやすい立場だ」と指摘しました。

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