エゾシカ肉専門店「ポロワッカ」代表で、鹿革ブランド「レザレクション」を展開する林徹さん=2024年8月、北海道訓子府町

 食害や交通事故が問題化するエゾシカは、年間に十数万頭が駆除される。「命を取る以上は余さず活用する責任がある」。北海道北見市のエゾシカ肉専門店「ポロワッカ」代表の林徹さん(49)は、食肉加工後に通常は捨ててしまう皮を使い、鹿革ブランド「レザレクション」を展開する。(共同通信=阿部倫人)

 妻の実家がある北見市に移住したのは2012年。周囲に狩猟をする人が多く、自身も免許を取得し猟をするようになった。

 当時、エゾシカの推定生息数は77万頭(2011年度)とピークを迎え、駆除が本格化していたものの、ほとんどは肉すら利用されず処分されていた。「せめておいしく食べなくては」と考えた林さんは勤務先をやめ、2015年にポロワッカを始めた。

 熟練ハンターが仕留めたエゾシカを仕入れ、素早く解体。うまみを増やすために温度や湿度を厳格に管理した部屋で1~3カ月熟成させる。

 インターネット販売だけでなく、東京都内のレストランなどに営業も行った。「当時は今ほどジビエが一般的ではなく、大変だった」と振り返る。

 鹿肉店が安定してくると、捨てていた皮の活用を考えるようになった。協力を求めたのは、皮革の産地として知られる埼玉県草加市の業者。革の加工から製品製造までを手がけてもらい、2018年にレザレクションを立ち上げた。

 柔らかいのに耐久性に優れているという鹿革。バッグや財布だけでなく、風呂敷やマフラーもあり、林さんは「この個体の皮はどんな製品に適しているかなど、解体所が展開するブランドだからこそ、こだわれる部分がある」と語る。

 北海道によると、エゾシカの推定生息数は一時60万頭台に減ったものの、2023年度は73万頭とピークに迫り、農林業の被害額も約48億円に上った。

 「活用先が増えないと駆除も進まない」と林さん。次は骨の利用も模索している。

「ポロワッカ」の加工場で熟成されるエゾシカ肉=北海道訓子府町(林徹さん提供)
「レザレクション」が販売している鹿革のショルダーバッグ(林徹さん提供)

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