能登の瓦を材料とした信楽焼の花瓶や食器などを見る(左から)大倉好子さん、小川公男さんら=2024年10月、石川県輪島市門前町

 能登半島地震で倒壊した住宅の屋根瓦を、信楽焼の器に再生する取り組みが始まった。石川県の被災地に入ったボランティアが被災者と職人を結び付け、廃棄される予定の瓦を陶器の素材に活用する。「生まれ変わらせて被災地にお返しし、元気を与えたい」。地震と豪雨の二重被災からの復興を後押しする考えだ。(金沢支局=川口巧)

 能登半島の住宅は、冬の降雪や凍結の影響を防ぐため、釉薬を塗り重ねた光沢のある黒い瓦屋根が特徴。今回の地震では多くの住宅が倒壊し、建築の専門家からは「瓦の重みが倒壊の一因だ」などと指摘された。

 崩れ落ちた瓦は「災害ごみ」として捨てられる。日本福祉大(愛知県美浜町)教授の山本克彦さん(63)は学生らと参加したボランティア活動のさなか、路上に山積みにされた黒瓦を目の当たりにした。「捨てられるのはもったいない。どうにかできないだろうか」。一緒に被災地支援に当たっていた滋賀県甲賀市の信楽焼職人、小川公男さん(58)に相談した。

 小川さんは、壊れた陶器を砕いてパウダー状にし、陶器の材料にするプロジェクトに取り組んでいる。瓦も粉末にして粘土と混ぜれば、器として生まれ変われるはず―。地元住民の了解を得て、5月以降、計約4トンの瓦を持ち帰り、配合や焼く温度などを変えながら試作を繰り返し、約3カ月かけて完成にこぎ着けた。

 10月4日、石川県輪島市門前町の仮設住宅集会所に、高さ50センチほどの大きな信楽焼の花瓶を届けた。「能登瓦は能登の人々の誇り。少しでも輝きを残したくて、瓦粉末の配合率を上げた」と小川さん。瓦と同じ漆黒の輝きを放っていた。

 花瓶を受け取った大倉好子さんは、地震で自宅が全壊し、趣味の生け花に使う花瓶も取り出せない状態となった。「重みがあるので、背の高い花でも安定させられる。すてき」と声を弾ませた。

 山本さんや小川さんらは、瓦の提供を受けて食器などの商品を製造し、全国で販売する計画を進めている。売り上げは被災地支援に使ってもらう予定だ。「失われそうになった能登の誇りを生き返らせる。復興に向かう被災地を勇気づけたい」

能登の瓦を材料とした信楽焼の花瓶を手にする小川公男さん。左は大倉好子さん=2024年10月、石川県輪島市門前町

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