MCI=軽度認知障害は、認知症の一歩手前の段階にあたり、物忘れなどの症状はあるものの生活に支障は無い状態を指し、来年には全国で564万人にのぼると推計されています。
こうしたMCIの人たちの状況を詳しく調べるため、兵庫県たつの市にある兵庫県立リハビリテーション西播磨病院は、ことし3月までの2年間にMCIと診断された159人とその家族を対象に、アンケート調査を行いました。
まず本人に、今の困りごとは何かを複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは
▽「もの忘れ・置き忘れ」で49%とほぼ半数にのぼり
ほかに
▽「体調がすぐれない」が14%
▽「何もやる気がおきない」が13%などとなりました。
また本人に今後、不安なことは何かを聞いたところ
▽「症状の進行」が最も多く、64%の人が回答し
▽「車が運転できなくなること」が36%
▽「家族などへの負担」が34%などとなっています。
MCIは、認知機能が低下しているものの、生活に大きな支障は出ていないため、病院を受診して診断される人はわずかで、その実情が見えにくいという指摘もあります。
調査を行った兵庫県立リハビリテーション西播磨病院の高橋竜一 認知症疾患医療センター長は「MCIの調査自体がほとんど行われていないが、誰もがなりうる状態であり、本人や家族が何に困っているのかを示すことが重要だと思っている。多くの人に医療機関の受診や支援の相談の参考にしてもらいたい」と話していました。
また、今回の調査で「特に困りごとは無い」と答えた人の割合は、本人では35%にのぼりましたが、家族では19%にとどまりました。
これについて高橋竜一センター長は「MCIの状態になっても本人が気付かなかったり、自分はまだ大丈夫と思ったりすることもあるが、本人と家族がしっかりと話し合って、早期に必要な対応を考えていくことが大切だ」と話しています。
MCI=軽度認知障害とは
MCI=軽度認知障害は、認知症の一歩手前の段階で、認知症そのものではありませんが、健常な状態でもなく、その「中間のような状態」とされています。
認知症には「1人暮らしが困難なほど認知機能が低下した状態」という定義がありますが、MCIは「同じ年代の人と比べて認知レベルが低下しているものの、基本的には日常生活を正常に送ることができる状態」を指します。
具体的には
▽もの忘れや探し物が増えたり
▽同じ話を繰り返して話すようになったり
▽ぼんやりすることが増えたりするなどと言われていて
家族など本人に近しい人が、気付くことも多いとされています。
MCIの診断は医師が行い、本人や家族に生活の状況を聞き取ったり、認知機能検査を行ったりして判断します。
医師の中には「認知症との線引きがあいまいで診断が非常に難しい」と話す人もいます。
ただし、MCIになったからといって誰もが必ず認知症になるわけではありません。
国立長寿医療研究センターによりますと、MCIと診断された人のうち
▽1年でおよそ5%から15%の人が認知症になる一方で
▽およそ16%から41%の人は健常な状態に回復するということです。
このため、早期に気付いて適切な対応を取り
▽健常な状態に回復したり
▽認知症への移行を遅らせたりすることが重要で
もの忘れ外来などを早い段階で受診することが推奨されています。
MCI 来年には推計564万人に
厚生労働省は、ことし初めてMCI=軽度認知障害の推計を公表しました。
それによりますと、65歳以上のMCIの人は来年2025年には564万3000人と、高齢者の6人に1人にのぼると推計されています。
これは、認知症の人の推計の471万6000人よりも多くなっています。
さらに、高齢者の数がほぼピークを迎える2040年には612万8000人に増加し、こちらも認知症の人の推計の584万2000人を上回る見通しです。
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