集まった支持者に手を振る斎藤元彦氏(17日、神戸市中央区)

17日投開票の兵庫県知事選は、前知事の斎藤元彦氏(47)が激戦を制した。自身を巡る内部告発問題に端を発し、不信任決議を突き付けられて始まった選挙戦。異例の展開をたどった末、民意は改めて同氏に県政のかじ取りを負託した。

同日夜、支援者や報道陣など数百人が詰めかけた神戸市内の事務所周辺。当選確実の一報が伝えられると「斎藤コール」が湧き起こった。遅れて姿を見せた斎藤氏はバンザイをすることなく繰り返し頭を下げ、目に涙を浮かべながら「組織や政党の支援がなく逆風からのスタートだった。力を結集し、勝ち抜くことができた」とあいさつした。

集まった支援者と握手する斎藤元彦氏(17日、神戸市中央区)

17日間の選挙戦で繰り返したフレーズは「斎藤か斎藤以外か」。告発文書の中で指摘された自身のパワハラなどを否定し、「負けるわけにはいかない」と県政改革の継続を訴え続けた。

県議会の不信任決議を受け、「ゼロから出直す」として失職直後から駅前に連日立ち続けた。当初は通行人に時折話しかけられる程度だったが、SNSを駆使した戦略もあって支持者は日を追うごとに増え続けたことに「県政を前に進めてほしいとの期待をいただいた」と述べた。

総務省によると、戦後、不信任決議が可決され出直し選で再選した知事は、2002年の長野県知事選の田中康夫氏以来2人目。県民の負託を得た斎藤氏は今後、混乱を招いた県政の立て直しが急務となる。「皆様の指摘・批判は真摯に受け止める」としたうえで「信頼関係を構築し、オール兵庫で前に進めていく」と力を込めた。

支援者の前で頭を下げる稲村和美氏(17日、神戸市中央区)

稲村氏「何と向き合ったのか違和感」

一方、選挙戦の開始当初は優勢とみられていた元尼崎市長の稲村和美氏(52)。自民党の一部県議の支援や県内の首長との連携を深め支持固めを図り、序盤は他候補をリードするとも報じられたが、知名度を武器に幅広く支持を集めた斎藤氏の猛追をかわしきれなかった。

神戸市内の事務所に姿を見せた稲村氏は「お力添えをいただいた皆様に心から感謝を述べたい。ご期待に沿えなかったことをおわびする」と述べ、支持者に頭を下げた。

選挙戦では街頭演説やミニ集会を積極的に開き、自身の対話姿勢をアピールしたが及ばなかった。選挙戦を振り返り、SNS上などで出回った真偽不明の情報を念頭に「どのような情報に基づき投票行動を決めるのか、課題が残った選挙戦だった」としたうえで「何が争点だったのか。斎藤候補と争ったというより何と向き合っているのか違和感があった」と語った。

斎藤氏の再選をうけ、県幹部や議会関係者からは県政混乱の早期収束を願う声が聞かれた。

ある県幹部は「議会の出方はまだ分からないが、議会との関係修復は難しく、予算も通りづらいのではないか」と話し、県政の混乱はしばらく続くとみる。別の幹部は「県政の正常化には議会や市町と信頼関係を構築することが不可欠だ」と話し、コミュニケーションの改善を願った。

ある自民県議は「民意が示された以上、会派としても斎藤氏との関係修復の努力を惜しむべきではない。それが県政の混乱を収める方法だ」と話した。

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