「紀州のドン・ファン」と呼ばれた男性を殺害した罪に問われている元妻の被告人質問。
最終日となった15日、被告の口から語られたのは、異常とも言える金への執着でした。
■元夫の死を目の当たりにして「どちらかというと無」
【検察側】「野崎さんが亡くなって、最初の感情は?」
【須藤早貴被告】「死体を見たのが初めてだったから、びっくりした」
【検察側】「喜怒哀楽で言うと?」
【須藤早貴被告】「どちらかというと無ですね」
元夫の死を目の当たりにした時にも、「感情が動くことはなかった」と話した須藤早貴被告(28)。
2018年、和歌山県田辺市で、55歳年上の元夫で資産家の野崎幸助さん(当時77歳)に、覚醒剤を摂取させて殺害した罪に問われましたが、初公判では無罪を主張しました。
■覚醒剤の購入は認めるも自殺や事故の可能性を主張
この裁判で、もっとも重要な要素の1つが、野崎さんの死因となった覚醒剤について。
先週始まった被告人質問で、須藤被告は入手にいたる流れについて、性的機能が衰えた野崎さんから頼まれ、密売人から薬物を購入したと説明。
また自身に向けられる野崎さん殺害の疑惑については…。
【須藤早貴被告】「(野崎さんが)『死にたい、死にたい』と言ってた」「事故で(本人が)量を間違えちゃったということもある」
と答え、野崎さんが自ら覚醒剤を使った自殺や、事故の可能性を主張しました。
■「遺産より目先の100万円が大事」と説明するも、役員報酬では“派手なお金の使い方”
そして、15日行われた最後の被告人質問。
検察側に「覚醒剤を注文したあとに“覚醒剤過剰摂取”という動画を見たのはなぜか」を問われると。
「注文したあとにYouTubeでお勧めされたので、タイミングが合ったことから見ていた」と説明、大きな意味はないと主張。
さらに、その後、検察側から重点的に聞かれたのは、野崎さんから毎月渡された100万円や遺産について。
須藤被告の返答からは、その異常ともいえる“金への執着”がうかがえました。
【検察側】「遺産は、ゆくゆくはもらえたら、どう使おうと考えていた?」
【須藤早貴被告】「私は先のことより目先のことが大事で、月100万円が大事」
野崎さんの死後、会社の代表になって手に入った役員報酬などの使い道については…。
【検察側】「大きな買い物はした?」
【須藤早貴被告】「うーん…車買った」
【検察側】「ポルシェ?」
【須藤早貴被告】「そう」
【検察側】「ハーレーダビッドソンのバイクも買った?」
【須藤早貴被告】「買った、1台」
【検察側】「友人とのラインで、顔変えたいとメッセージ、実際に美容整形した?」
【須藤早貴被告】「しました」
【検察側】「総額いくら?」
【須藤早貴被告】「数百万単位」
派手なお金の使い方をしたことを赤裸々に語りました。
■「死に方を考えてほしい」と亡くなった男性に思いを語る
そして、検察側から「今、改めて野崎さんが亡くなったこと」について聞かれると…。
【須藤早貴被告】「目の前にいたら、文句を言ってやりたい」
この答えに対しては、弁護側からも…。
【弁護側】「今、野崎さんがいると思って、言ってみて」
【須藤早貴被告】「死に方を考えてほしかった。社長がこのタイミングで死んだせいで、私は何年も人殺し扱い」
最後まで犯行を否認し、自身の思いを語った須藤被告。
審理は11月18日に終わり、12月12日に判決が言い渡される予定です。
■最後の被告人質問 須藤被告の“変化”
和歌山地裁前には裁判の傍聴を続けている樋口記者がいます。
今回は須藤被告の様子に変化があったということです。
【樋口諒記者】「きょうは午前から午後にかけて検察側、そしてその後、弁護側、裁判所からと、須藤被告への質問が続きました。須藤被告の質問の受け答えのトーンが非常に印象に残りました」
「これまでの被告人質問で須藤被告は、弁護人や検察側の質問に対して、はきはきとした口調で答えることも多かったです。しかしきょうの被告人質問では、傍聴席の最前列で聞いていた私でも、少し声が聞き取りづらい場面もありました」
「被告人質問もきょうで3日目となって、最終日ですが、須藤被告は疲れがたまっているのか、少し険しい表情や、こめかみを押さえる仕草も見られました」
「あとは検察側から証拠を見せられながら質問されている時には、『ここ書いてありますけど』と、少しいら立ったような口調で言い返すような場面も見られました」
この事件は直接証拠がない中で、検察側も間接証拠、状況証拠を積み重ねてきましたが、裁判の傍聴を通してどう感じていますか。
【樋口諒記者】「これまでの裁判すべて傍聴してきているんですけれども、須藤被告の殺人罪に関しては、スマホの検索履歴であったり、野崎さんが覚醒剤を摂取したとされる時間に2人っきりだったことなど、状況証拠だけが積み上がっている状況です」
「ただ、野崎さんがどうやって口から覚醒剤を摂取したかについては、いまだに分かっていません。このことについて、裁判官や裁判員がどのように判断をするのか、そこが注目されています」
■「決定的な“黒”な証拠はない」裁判員は難しい判決を下すことに
3回にわたり行われた被告人質問が終わりました。今後の判決のポイントはどのようなところになるのでしょうか。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「覚醒剤を入手したところまでは、須藤被告は認めていますが、殺人罪だとしたら、それをどうやって野崎さんに飲ませたのか。もしかしたら、野崎さんが自分から飲んだ。例えば、量を誤って飲んだという事故の可能性もありますし、自分から致死量を飲んだという自殺の可能性もあると。その線は消せていません」
「状況証拠といいまして、スマホの検索履歴であったり、こういう(覚醒剤過剰摂取)動画を見ていたり、そういう証拠はどんどん積み上がっていて、いわば“グレー”がいっぱい積み上がっていますが、決定的に“黒“な証拠はありません」
「そこで裁判員や裁判官が、この裁判全体でどう判断するか。これは非常に難しいと思います」
裁判員がどう判断するのか。本当に頭を悩ませると思います。12月12日に判決は言い渡されます。
(関西テレビ「newsランナー」2024年11月15日放送)
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