「ヒートショック」とは
「ヒートショック」を体験した男性は
銭湯の「ヒートショック」対策は
専門家 “お年寄りなどのほか 若い人でも長風呂に注意”
冬場の入浴の際に発生しやすく、具体的には、暖房が効いたリビングから寒い脱衣所や浴室に移動すると血管が収縮して血圧が一気に高くなり、入浴してからしばらく湯船につかっていると血管が広がって逆に血圧が下がります。さらに、湯船から出て寒い脱衣所に移動すると、再び血圧が上昇します。
このように血圧が大きく変化することで、立ちくらみや吐き気などの症状が出るほか、血管や心臓に負担がかかるため、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすおそれもあるということです。
ヒートショックで亡くなった人の詳しい統計はありませんが、入浴中に溺れて亡くなった65歳以上の高齢者は、おととしは全国で5800人余りと、ここ10年で最も多くなっています。
消費者庁によりますと、おととし1年間に入浴中に溺れて死亡した高齢者は全国で5824人に上り、10年前と比べて1000人以上増加しています。これは、同じ年に交通事故で亡くなった高齢者の2154人の2.7倍にあたります。入浴中に溺れて死亡した事故について、発生した時期を月別にまとめた2019年のデータでは、11月から4月にかけて多く起きていて、1月が最も多かったということです。消費者庁は、冬場に事故が増える原因として、入浴の前後の温度差で血圧が大きく変動して引き起こされる「ヒートショック」を挙げていて、温度差を減らすため、入浴の前に脱衣所や浴室を暖めておくなどの対策をとるよう呼びかけています。
青森県八戸市の会社員、浜田悟さん(42)は、おととし12月上旬の夜に「ヒートショック」を体験しました。浜田さんによりますと、子どもたちと一緒に風呂に入り、20分ほど湯船につかった時点で気分が悪くなったため急いで脱衣所に出たところ、立っていられないほどのめまいと強い吐き気を感じたといいます。そして、その場で意識を失って倒れてしまい、妻の呼びかけで数分後に意識が回復しましたが、しばらくの間、めまいなどの症状が残ったということです。
当時、風呂の温度は41度に設定していた一方、脱衣所は肌寒く感じ、寒暖差は大きかったといいます。浜田さんはそれまで「ヒートショック」について知らなかったということで、自身の体験を踏まえて、ことしは先月下旬から脱衣所の床暖房の温度を高くするなどの対策を取っています。
浜田さんは「私はたまたま家族がいたので助けてもらえましたが、もし1人で同じような状況になってしまうと、場合によっては亡くなってしまうケースもあると実際に体験して思いました。危険な状態になることをよく理解していただき、十分に注意してほしい」と話しています。
冬場の入浴の際など、急激な温度変化によって引き起こされる「ヒートショック」を防ごうと、対策を行っている銭湯もあります。東京・豊島区の銭湯では、入浴の前後の温度差を小さくするための取り組みを行っています。
冬場には脱衣所の温度を25度に保つようにしていて、6日からは加湿器を稼働させ始め、湿度を上げることで寒さを感じにくくしています。
また、開店するまでの1時間は、脱衣所から浴室に入る扉を開け放しておき、移動したときの温度差をできるだけなくすようにしています。さらに、5年前には浴室のタイルを冷たさを感じにくい素材に変えていて、その上を湯船からあふれたお湯で暖めているということです。
銭湯の店主によりますと、冬場になると自宅の浴室で倒れることを心配して、銭湯に通う1人暮らしのお年寄りが増える傾向にあり、「ヒートショック」対策の重要度は増しているということです。週に2、3回通っているという52歳の男性は「ことしは秋を感じる前に冬になってしまったと思いました。ヒートショックは怖いので気をつけたい」と話していました。
「妙法湯」の店主、柳澤幸彦さん(59)は「常にどうやって安全に風呂に入ってもらうか考えている。足や手にお湯をかけて温度差に慣れさせてから湯船に入るなど、注意していただきたい」と話していました。
「ヒートショック」のリスクが高いのは、お年寄りのほか、高血圧や心臓の持病がある人などですが、医師で東京都市大学の早坂信哉教授によりますと、若い人でも、スマートフォンを見るなどして長風呂をする場合は注意が必要だといいます。そのうえで、対策として脱衣所や浴室を暖めるなどしてリビングとの温度差を5度以内に抑えることや、風呂の温度を40度程度にして入浴の時間は10分程度にとどめるよう呼びかけています。
早坂教授は「急に寒くなるとまだ体が慣れていないので、『ヒートショック』を引き起こしやすい。温度差をなくすことがいちばん大切です」と話しています。
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