いつの時代も頭を悩ませる、「漢字の書き順」。最近では、漢字テストで、大半の漢字にバツが付けられたと一部報道で紹介され、議論になった。記事によると、小学4年生の子どもが半泣きで、この結果を伝えたという。
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採点した教師は「とめ」「はね」「はらい」が、きちんとできていなかったことを理由にした。SNSでは「先生の採点はシビア」「読めれば良い」など、教師の厳しさが指摘されている。文字を書かなくなった時代に、書き順まで教える意味はあるのか。『ABEMA Prime』では、有識者とともに “書くことの意味”を考えた。
■細かすぎた漢字テストの採点「楽しい、もっと書きたいと思ってもらうべき」
元小学校教師の教育評論家である親野智可等(おやの・ちから)氏は、冒頭のテストについて、「一番大事な指導は『漢字は面白い』『もっと覚えたい』という気持ちにさせることだ」と語る。自らも「20代の頃は『子どものためだ』と、こういう採点をしていた」という。しかし、子どもたちが「漢字嫌い」になるのを見て、考えを改めた。そこには国民性もある。「日本人は丁寧で、歴史も長い。文化の伝承が大事だという気持ちが基本にあるが、それが行きすぎて逆効果になっている」。学力や進路への影響は、どの程度あるものなのか。「中学受験で、そういう採点をする学校もあるが、少数派になりつつある。文化庁は『字体が同じなら、字形が違ってもバツにしてはいけない』と明記している」。
書道家で筆耕士の清水克信氏は、とめ、はね、はらいは「必要」だとの立場だ。「先ほどの答案用紙は行きすぎだが、真面目な先生にも同情する。完璧に書かなきゃいけないと考えすぎたのではないか」。
最近では手書きする機会も減った。親野氏は「人前で書くことは住所か名前程度だ。メモはなくならないと思うが、どこまで書き順にこだわることに教育的効果があるかは疑問。同音異義語を使い分ける方が大切だ」と語る。
■正しい書き方を覚える意義は?
「パックンマックン」のパックンは、「あんな時間を小学校で使って、なぜ子どもが塾に行かなきゃいけないのか」と、教育の問題点を指摘する。一方で「とめ、はね、はらいは、スポーツやピアノと同じで、基礎的なフォームを覚えるものだ。しっかり覚えれば、書く場面で役に立つ」とも話す。その上でパックンはあまり文字を書かない現代社会を踏まえて、「ボールも社会人になって投げない」とも論じる。そして「基礎知識が土台を作る。ボールは体を鍛えて、漢字は思想を鍛える。AI時代だからこそ必要だ。全ての教育において、言語は必要になる」と強調した。
親野氏は「文化の伝承も重要な学校教育の使命だが、学校ではやらなきゃいけないことが多い」と語る。「プログラミングや人権教育、主権者教育、消費者教育、性教育……。“○○教育”が30以上あって、どれも大事だ。時間が有限である以上、断捨離できるものはしないといけない」と、教師の負担を説く。
清水氏は「小学校で学ぶ漢字は、書き順をきちんと教えた方がいい」と考えている。「書き順には法則があり、低学年でもやっていれば間違わなくなる」と利点を語る。「“美文字”の第一関門になる。もっと上手になりたいと、行書で早書きしようとしたときにも、筆順が影響する」。
■書くことで鍛えられる記憶力、理解力
パックンは「算数も飲み会の会計程度しか日常的には使わないが、考え方をインプットすることで、思考能力が高まる」との考えを示す。「それと同じく、字を書く効率を良くしたり、キレイに見せたりと、デザイン性の勉強にもつながる」。しかしながら、日常生活では「メールの返事は、AIが推薦する文章に頼っている」という。「自分の思考力を、毎日少しずつ失っているように感じる」。 とは言っても、学校教育の現場では、手書きが再評価されているようだ。親野氏はスウェーデンの事例として、「ITの勉強道具をやめて、紙の教科書とノートで手書きした方が、理解力や記憶力、思考力が深まるという研究結果がある」と紹介した。
(『ABEMA Prime』より)
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