ウェディングドレスで知られるデザイナー・桂由美さんの訃報(ふほう)に、福井県内でも悲しみの声があがった。若狭町には礼装メーカー「アルファブランカ」(京都市)の生産拠点があり、桂さんのドレスづくりを支えてきた。同社の坂下千夏社長(48)は30日に取材に応じ、その人柄と功績を振り返った。

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 同社の創業者で坂下さんの父志郎さん(小浜市出身)は、桂さんと半世紀、ドレスづくりで伴走してきた。1989年に旧三方町(現若狭町)に工房を開設。2022年には桂さんのドレスを集めた博物館「YUMI KATSURA MUSEUM WAKASA」をオープンした。坂下さんは「多くの花嫁を幸せにした桂さんの言葉と姿を胸に、悲しまずに前を向いて社員一同、ドレスづくりに邁進(まいしん)したい」と話した。

 坂下さんは昨年父を亡くしたとき、桂さんから「もし私の身に何かあっても悲しまないで。死は悲しみじゃないのよ」と声をかけられたことを紹介。「桂さんも父も多くの人の幸せにこだわってきた。悲しみは何も生まない。幸せなものづくりをするのよ、と言われた気がした。その桂さんの思いとともに日々を生きたい」と続けた。

 桂さんが1960年代に東京・赤坂に店を開いたとき、結婚式でドレスを着るのは3%ほどだったという。常々、「文化を変えた責任を背負って生きている。その思いでものづくりをしている」と話していたと振り返った。4月にも桂さんと京都で花見をしたり、東京で次の企画について話したりしたという。「新しいデザインや素材で切り込みながらも、これからも桂さんらしいドレスを作り続けたい。着る花嫁さんの幸せを第一に考えて、先生の意志を継いで頑張りたい」と力を込めた。

 また杉本達治知事は「県内の結婚機運の醸成や、嶺南地域の振興に多大な貢献をいただきました」などとするコメントを出した。(佐藤常敬)

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