先週、動画サイトに投稿されたある動画が拡散、話題になった。駅のホームで突然始まったケンカの一部始終を撮影したもので、原因はお互いの肩がぶつかったことによるもの。始まりは言い争いだったが、途中から白い洋服の男性が一方的に殴る、蹴るという展開になった。
【映像】殴る、蹴る…深夜の駅で起きた激しいケンカ
ケンカが起きた時間が夜遅く、終電に近い時間帯であったこともあり、周囲の人々も急いでいたように見えるが、ただこのケンカの仲裁に入る人はなく、次々と通り過ぎていった。ネット上では「誰も止めないのか」「なんでみんな無関心なの?」という声もあるが、過去には止めに入った駅員が線路に落下したり、仲裁に入った男が当事者の男を殴り、死なせてしまった事件もある。『ABEMA Prime』では、この動画を投稿した当事者に撮影した時の心理を聞き、ケンカに遭遇した時の対応策を考えた。
■目の前で起きたケンカをスマホ撮影「咄嗟の行動だった」
話題になったケンカ動画を撮影した前田りょうたろうさんは、当時の状況を振り返る。「黒い服の方が私の目の前を歩いていたんですが、酔っ払ってフラフラした状態だった。白い服の方がホームに立っていたところに、後ろからぶつかった。黒い方は酔っていたからか謝りもせず立ち去ろうとしたところ、白の方が『おい』という形で声をかけた。そこでちょっと軽く口論みたいになって、それがヒートアップしていった」。都心のホームであれば、人同士がぶつかることも珍しくないが、そこから殴り合いのケンカは3分ほど続き、途中からは黒い服の男性が倒れたところから、白い服の男性が殴る、蹴るを続けるという展開になった。途中、誰か止めに入る人はいなかったのか。「途中、サラリーマンの方がいた。駅員も途中で来たが、いなくなったので鉄道警察か何かを呼びに行ったのかもしれない。終電だったので周りの人も急いでいる状態で見向きもせず、駅員も少ない状態でもあった」。撮影した前田さん自身は「目の前で起きたこともあって、私が仲裁に入って止めるのが一番よかったとも思うが、1人が酔っ払いで、場所がホームでもあった。咄嗟に出た行動は、自分自身の身を守って、動画を撮る行動だった」と、スマホを構えた。「駅員が来るのも何分かかるかわからないし、現在はSNSが強くて拡散力がある。動画に撮って証拠を残す方が、今後のためになると思った」と語った。
ジャーナリストの堀潤は、ケンカを目の当たりにしたものを撮影、証拠に残すという判断に「非常にメディア的なアプローチ。目の前で起きていることを鎮火させるよりも、その先にあるメッセージみたいなものが先に浮かんだのか。何か成功体験があるのか」と質問。前田さんは「このような経験は全くないが、今の若い世代はSNSをすごく活用する。私もいろいろなSNSをやっているが、その中で誰かが上げたものが全国のいろいろな方に見てもらえる」。この動画が拡散するかもしれないとう予感は「ないとは言い切れない」と述べた。
ケンカを撮影して世に広める行為について、堀氏は「紛争地域のジャーナリストの行動でも同じような議論が起きている。なぜ目の前の状況を撮り続けるのか、君が止めに入って命を救えばいいじゃないかと。ただ、これは伝える意義があるからという議論がある」と語ると、前田さんは「綺麗事に聞こえるかもしれないが、動画を撮った時には今後のために大きい場所に取り扱ってもらう目的も少しはあった。今、動画を撮ることはすごく有効的」とした。さらに撮影することで、自身に危険が降りかかるリスクについては「僕自身は逆だと思う。この時代、悪いことをしている人は、動画を撮られる側になると『ヤバい』と思うはず。拡散されて顔も出てしまうリスクがあるからだ」と、カメラを向けることへの恐怖は、さほどなかったようだ。
■メンタルカウンセラー「大声で叫ぶと相手も興奮する」
今回、前田さんはケンカの様子を動画にし、サイトで投稿するという行動を取ったが、多くの人が素通りをしたように、自身の身を守る行動に出るのが大多数だ。アンケートでも、仲裁に入るという人は5%。残り95%は関与しないわけだ。メンタルカウンセラーの大城眞抽美氏は、ケンカに遭遇した時の対応策を紹介した。まず、素通りする心理については「人の本能の部分が強い。防御反応が働いて、無関心になる。人はショックなこと、トラウマ的なことなど、強い衝撃を受けると心をブロック、シャットダウンしてしまうので、これは仕方ない」と、強い恐怖になるほど無関心になるものだとした。 また、周囲の人の行動として心掛けたいことは「叫んだり否定したりしない」「話を聞いて、声に出させてストレスを発散させる」といったものだ。逆に「警察を呼んだぞ!」「やめろ!」「いい加減にしろ」など大声で叫ぶことは、相手をさらに興奮させることにつながるという。「ミラーニューロンというものがあり、相手が興奮しているのを見ると、自分も興奮してくるもの。大声に興奮して(もう一方も)大声になってしまう。ちょっとひと呼吸置いて、穏やかにきちんと聞いてあげないと、ケンカは止まらない」と説明した。
(『ABEMA Prime』より)
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