肌をピリピリと刺激する強酸性の泉質で知られる北海道弟子屈(てしかが)町の川湯温泉で9月12日、公衆浴場の営業が約2年ぶりに再開された。1958年開業で地域に愛されてきたが、老朽化などにより2022年10月に休業。釧路市で左官店を営む中野吉次(よしじ)さん(78)が前経営者から運営を引き継ぎ、自ら改修を手がけた。「温泉に入りに来てくれる住民や、全国のファンの思いに応えたい」と語る。(共同通信=吉野桃子)
「以前の雰囲気を保ちながら、内装はきれいにパワーアップしてかえってきてくれた。うれしい」。リニューアル初日、弟子屈町の会社員星野慎吾さん(42)が湯上がりで火照った顔をほころばせた。根っからのファンで、以前から足しげく通ってきたという。
前経営者が営む土産物店の常連だった縁で、運営を託された中野さん。長男の協力を得てクラウドファンディングで改修資金を募ると、600万円超が集まった。番台や天井など、改修前の設備を生かして面影を残す一方、客の要望が多かったシャワーを導入。女湯の壁面に摩周湖、男湯は硫黄山と、町の名所のモザイクアートを制作し風情を添えた。
休憩室には内装の雰囲気に合わせ、以前なかった赤電話を装飾として置いた。左官業の傍ら、釧路市で昭和の生活用具などの資料館を運営する中野さんならではのこだわりで、「ここにしかない思いやりの心を込めた。皆さんに喜んでもらいたい」。今後は出身地である秋田県仙北市のシダレザクラを敷地に植える予定だ。
料金は中学生以上500円、小学生300円、未就学児無料で、住民は割引がある。営業時間は当面の間、午前11時から午後6時最終受け付けで水曜定休。「地元だけでなく全国の人に応援してもらった。この町に来た時はぜひ入って」と呼びかけた。
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